信託登記と相続登記の違い
家族信託に関する相談でよくいただく質問のひとつが、「信託登記と相続登記は何が違うのか?」という点です。
ここでは、登記の基本的な仕組みから、家族信託における名義の扱いまで、わかりやすく解説します。
相続登記とは
相続登記は、相続が発生したあとに、亡くなった人の名義の不動産を相続人に移すための登記です。
たとえば、父が亡くなった場合に、その名義の自宅を子どもが相続するには、所有権移転登記(相続登記)を行う必要があります。
- 登記簿上の「所有者」が変更される
- 法定相続分または遺言・遺産分割協議に基づいて手続きを行う
- 2024年4月以降は相続登記が義務化され、一定期間内の手続きが必要
信託登記とは
一方で、信託登記は、家族信託を設定した際に、その対象となる不動産を「信託財産」として登記簿に記載するための登記です。
このとき、不動産の名義は委託者から受託者へと移りますが、それはあくまで“管理のための名義変更”であり、受託者の財産になるわけではありません。
- 所有者欄には「〇〇(受託者)信託口」などと記載される
- 不動産の権利そのものは信託契約に基づき、受益者の利益のために管理される
- 信託内容や信託の終了条件などが登記簿に明記される
登記簿の例
権利部(甲区)
| 2 | 所有権移転 | 平成20年4月20日 ********** |
原因 平成20年1月 売買 所有者 |
| 3 | 所有権移転 | 平成29年5月10日 ********** |
原因 平成29年5月7日信託 受託者 |
| 信託 | 信託目録第1号 |
信託目録第1号が登記簿に追加されます。
所有権の違い:本当の持ち主は誰?
相続登記では、所有権は完全に相続人に移ります。相続が終わればその人の財産になります。
一方、信託登記では、名義が受託者に移っても「その人の所有物になったわけではない」点が大きな違いです。
信託された不動産は、「受託者が形式的に名義を持ち、実質的には受益者のために管理・運用されるもの」です。
相続登記が不要になるわけではない
よくある誤解に、「信託しておけば相続登記は不要になる」と思われる方がいますが、これは正確には半分正解、半分誤解です。
- 信託された財産については、相続登記を経ずに受託者名義で管理を継続できる
- ただし、信託に含まれていない財産(他の不動産や預金など)は、通常どおり相続登記・遺産分割が必要
つまり、信託登記によって一部の不動産の相続手続きが不要になることはあるが、すべての財産に適用されるわけではないということです。
信託終了後の登記はどうなる?
信託が終了した場合(たとえば受益者の死亡など)、不動産の名義は契約で定めた帰属権利者に移ります。
このときは、信託終了に伴う所有権移転登記を行う必要があります(通常は遺贈・譲渡等に類する課税関係が発生)。
まとめ
| 項目 | 信託登記 | 相続登記 |
|---|---|---|
| 目的 | 信託財産としての管理 | 所有者の死亡に伴う名義変更 |
| 名義の移転先 | 受託者(信託口) | 相続人 |
| 手続きのタイミング | 信託契約を結んだ時 | 相続が発生した時 |
| 登記の中身 | 信託の目的・受益者などが記録される | 法定相続人・持分割合などを記録 |
| 受託者の立場 | 管理者。実質的な所有者ではない | 名義人=所有者 |
信託登記と相続登記は、どちらも「名義を変える」手続きですが、その意味も目的も全く異なるものです。
家族信託を活用する場合には、信託登記の仕組みを理解し、相続との関係を明確に整理しておくことが大切です。