親族間のトラブル回避と経営権の安定移行 | 事業承継としての家族信託 | 家族信託

親族間のトラブル回避と経営権の安定移行

中小企業の事業承継では、「誰が経営を継ぐのか」「株式をどう分けるのか」という問題が、しばしば親族間のトラブルに発展します。
家族信託を活用することで、承継のルールと責任を明確化し、経営の継続と親族間の関係性の両方を守ることが可能になります。

親族間で起こりがちな問題

  • 複数の子どもに平等に株式を相続させたことで、意思決定が分裂
  • 経営に関わらない相続人が、経営方針に口出ししてトラブルになる
  • 相続後の株式の分散によって、議決権の過半数が確保できず経営が不安定に
  • 誰に株式を託すかが曖昧なまま、親の死後に争いが表面化

こうしたリスクは、経営権と財産権を分けて考えずに、単純に「平等に分ける」発想で相続を考えることに起因する場合が多くあります。

家族信託で「分けない」「託す」という選択を

家族信託を活用すれば、自社株式を経営に適任な1人に集中させつつ、他の相続人には別の財産で公平に対応するという設計が可能です。

たとえば、以下のような仕組みです:

  • 委託者:親(経営者)
  • 受託者:長男(後継者)
  • 信託財産:自社株式
  • 受益者:当初は親、のちに長男
  • 他の相続人には、預金や不動産を遺言などで配分

こうすることで、

  • 株式は分けずに経営者に集中させ、議決権の分散を防ぐ
  • 他の相続人には別の財産で公平感を保つ
  • 信託契約で承継ルールを明確にし、後継者の立場を明文化

この「分ける」のではなく「託す」設計が、経営の安定と親族関係の維持の両立につながります。

トラブルを未然に防ぐ信託設計のポイント

  • 株式の分散を避ける:受託者1名に集中させることで、議決権のブレを回避
  • 意思決定権のルール化:指図権や将来の議決権行使ルールを明記
  • 受益者の変更・終了条件を明確に:誤解や後継者争いを防ぐための明文化が重要
  • 他の相続人とのバランスを調整:遺言や生命保険などと組み合わせることで、公平感を補完

説明と共有が信頼を築く

制度設計そのものも大切ですが、それ以上に重要なのが家族への事前説明と情報共有です。
「なぜこの設計にしたのか」「それぞれにどう配慮しているのか」を丁寧に説明することで、後々の不信感やトラブルを大幅に減らすことができます。

まとめ

  • 事業承継では、株式の「集中」と財産の「公平配分」のバランスが重要
  • 家族信託を使えば、経営の軸をぶらさず、親族間の不和を予防できる
  • 法的な制度と感情的な納得の両方を意識した設計が、円満な承継を支える

「平等に分ける」だけでは、かえって不公平になることがあります。
誰に何をどう託すのか――それを明確にすることが、家族も会社も守る第一歩です。

【注意事項】
本記事は、法律に関する一般的な情報を提供するものであり、個別具体的な案件についての助言を行うものではありません。特定の事案や状況に応じた判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

また、正確性を期すよう努めておりますが、本記事の内容についての完全な正確性や最新性を保証するものではなく、本記事の利用により生じたいかなる損害についても当方は一切の責任を負いかねます。

法令や規制は頻繁に変更される可能性がありますので、必要に応じて最新の情報をご確認いただくことをお勧めいたします。
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