信託財産の範囲と設定方法
信託財産とは
信託財産とは、委託者が信託契約によって受託者に託す財産のことです。
信託契約の成立により、その財産は受託者の名義となりますが、受託者個人の財産とは区別され、受益者のために管理・運用されるものです。
信託できる財産の種類
家族信託では、以下のような財産を信託の対象とすることができます。
- 不動産:自宅・賃貸用不動産・土地・建物など
- 預貯金:信託契約後、専用の信託口口座に移して管理
- 有価証券:上場株式・自社株・投資信託など
- 賃貸借契約上の地位:不動産オーナーとしての立場をそのまま信託
- 将来の債権:将来得られる収益や賃料債権なども含むことが可能
ただし、以下のような財産は信託の対象外となるため、他の制度(遺言・任意後見など)で別途対応が必要です。
- 公的年金受給権
- 生命保険の死亡保険金(ただし受取人の指定によって間接的な設計は可能)
- 委託者名義のままにしておきたい資産
信託財産の設定方法
信託契約書では、信託財産として何を・どのように信託するかを明記する必要があります。
記載方法によって、信託登記や信託口口座の開設に影響するため、以下のように具体的かつ正確に記載することが重要です。
例:
- 東京都◯◯区◯◯番地の土地・建物(不動産番号を明記)
- 委託者名義の普通預金(〇〇銀行〇〇支店、口座番号×××)を信託口口座にて管理
- 委託者が保有する○○株式会社の株式○○株
また、信託契約の中で「信託財産にあとから加えることができる」という条項(追加信託条項)を設けることも可能です。
信託財産ごとの実務上のポイント
- 不動産:信託登記が必要。名義が「受託者(信託口)」に変更され、信託の内容も登記簿に記載されます。
- 預貯金:信託口口座の開設が必要。通常の口座とは異なるため、対応可能な金融機関の確認が必要です。
- 株式(上場・非上場):管理証券会社や株主名簿の名義変更、定款上の譲渡制限などに注意。
信託財産の管理と分離
受託者は信託財産を自分の財産とは明確に区別して管理する義務があります(分別管理義務)。
信託用の専用口座・帳簿・証券口座などを準備し、家計と混在させないことが、信託運用の基本です。
まとめ
- 信託財産とは、信託契約によって受託者に託される資産のこと
- 不動産・預貯金・株式など幅広い資産が対象となる
- 契約書で具体的かつ正確に記載し、管理の実務にも配慮が必要
- 信託財産の性質によって、登記・金融機関・会社法など個別の対応が求められる
家族信託では、「何を信託するか」が制度の実効性を左右します。
対象財産と管理方法を丁寧に設計することで、より確実で柔軟な信託運用が可能になります。