死後の財産分配との組み合わせ方
家族信託は、生前の財産管理に強みを持つ制度です。
しかし、本人の死亡後に残された財産をどのように分配するかについては、必ずしも万能ではありません。
そのため、家族信託を活用する際には、死後の財産分配については遺言や生命保険など他の制度と組み合わせることが効果的です。
家族信託の「終了後」を設計しておく
家族信託は、契約で定めた終了事由(たとえば、委託者または受益者の死亡)によって終了します。
このとき、信託財産がどこに帰属するのかを契約で指定しておくことが大切です。
たとえば、
- 信託終了後に残った財産は、長男・長女・次男で3分の1ずつ分ける
- 特定の財産(たとえば自宅)は長女に帰属させる
といった形で「帰属権利者」やその割合を明記することで、遺産分割協議を経ずに分配することも可能です。
信託の対象外となる財産にも備える
家族信託で管理できるのは、信託契約で指定した「信託財産」のみです。
たとえば、
- 年金受給権
- 生命保険の死亡保険金
- 一部の預金口座
などは、信託の対象外であるため、遺言や名義変更、保険の受取人指定などで個別に設計する必要があります。
家族信託と遺言を併用する
信託契約では扱えない財産や、信託契約外での財産の帰属指定には、遺言との併用が有効です。
- 信託財産以外の現金・動産を遺言で指定する
- 万が一、信託契約が無効になった場合の予備的措置として遺言を準備する
信託契約と矛盾しないように内容を整理し、連動させることが重要です。
生命保険も活用する
生命保険は契約で受取人を指定できるため、遺産分割の対象外として活用できます。
そのため、
- 特定の子にまとまった資金を残す
- 相続税支払いの原資として準備する
- 他の相続人とのバランス調整に使う
といった形で、家族信託と役割を分けて併用することが可能です。
トータル設計のすすめ
信託・遺言・生命保険などは、それぞれ得意分野が異なります。
それぞれを単独で考えるのではなく、「どの財産を、誰に、どのように残すか」という視点で、組み合わせて設計することが大切です。
必要に応じて、行政書士・税理士・司法書士・保険の専門家などと連携しながら、全体像を整えることが、安心できる相続準備につながります。
まとめ
- 家族信託は「生前の管理」に強く、死後の分配は設計に工夫が必要
- 信託の終了時に「帰属権利者」を明確にしておくことが重要
- 遺言や生命保険をうまく併用して、死後の資産分配を確実に
家族信託は単体で万能な制度ではありません。
家族の未来を見据えた“トータル設計”こそが、真の安心につながります。