資産管理・処分の柔軟性
家族信託の大きな特徴のひとつが、「財産の管理や処分を、柔軟に行えること」です。
特に高齢の方が、自分の判断力が弱くなる将来に備えて、信頼できる家族に財産の管理や売却を任せることができるのは、家族信託ならではの魅力です。
たとえばこんなことができます
- 将来、判断能力が低下しても、不動産を売却できる
⇒ 委託者が元気なうちに「この不動産は、必要があれば売っていい」と信託契約で決めておけば、受託者がタイミングを見て売却することが可能です。 - 財産の一部を現金化し、生活費や施設入所費にあてる
⇒ 信託財産に含まれる不動産を売却し、その代金を生活に使う、といった柔軟な活用ができます。 - 空き家の維持管理や賃貸運用を子どもが引き受ける
⇒ 親が施設に入ったあとも、子どもが家を貸したり、解体したりといった判断を速やかに行えます。
成年後見制度との違い
成年後見制度では、本人の財産を守ることが主な目的です。そのため、たとえば不動産を売却するには家庭裁判所の許可が必要となり、自由に動かすことができません。
また、原則として財産を積極的に運用したり、管理方法を変更したりすることも制限されているのです。
それに対して家族信託では、あらかじめ決めておいた範囲内であれば、受託者が柔軟に判断して行動することができます。
「この物件は売っていい」「賃貸に出してよい」「定期的に現金化して生活費に充ててよい」など、信託契約で目的と方針をはっきりさせておくことで、より実用的な仕組みにすることができるのです。
信託=管理だけではない
家族信託というと「財産を管理するもの」と思われがちですが、実は処分(売る、貸す、運用する)も含めて自由度が高いのが特徴です。
信託契約をしっかり設計すれば、本人ができなくなったことを、家族が代わりにできるという安心感を得ることができます。
ただし、信託契約で定めていない行為は原則としてできません。何を任せたいのか、誰のために、どのように財産を使いたいのか――をしっかり考えて契約を結ぶことが大切です。