無効となる遺言の典型例
せっかく遺言書を作成しても、法的に無効と判断されてしまえば、遺言者の意思は実現されません。
遺言の有効性は民法の要件に厳格に従って判断されるため、形式・内容・作成時の状況について注意が必要です。
ここでは、無効となる典型例として以下の3点について詳しく解説します。
- 遺言能力の欠如
- 形式的要件の不備
- 詐欺・強迫・錯誤による作成
1. 遺言能力の欠如
遺言能力とは、自らの判断で法律行為として遺言を作成できる能力を指します。
民法963条により、満15歳以上であれば遺言が可能とされていますが、重要なのは作成時に意思能力があったかどうかです。
無効となる例:
- 重度の認知症などにより、自分の財産や相続関係を理解できない状態で作成された場合
- 妄想・幻覚などの影響下で書かれた遺言
実務上の対策:
- 高齢者や体調不良の場合は、公正証書遺言を利用し、医師の診断書等を準備すると安全
- 作成時の状況を説明できる証人・記録があると、後の無効主張を防ぎやすい
2. 形式的要件の不備
遺言書には法律で定められた厳格な形式があります。
特に自筆証書遺言では、日付・署名・押印・本文の自筆が求められ、1つでも欠けると無効となります(民法968条)。
無効となる例:
- 日付が「令和○年○月吉日」などで特定できない
- 署名がない、または代筆されている
- パソコンで作成(※財産目録のみパソコン作成可)
実務上の対策:
- 可能であれば公正証書遺言を利用する(公証人が形式を確認)
- 自筆証書遺言の場合は、作成前に法律要件を事前確認する
3. 詐欺・強迫・錯誤による作成
遺言が詐欺や強迫によって作成された場合や、重大な勘違い(錯誤)に基づいて作成された場合には、その遺言は無効または取消しの対象となります。
詐欺・強迫による遺言(民法1025条):
- 虚偽の情報を信じ込ませて、財産の配分を変更させた
- 脅迫により特定の相続人に有利な遺言を書かせた
錯誤による遺言:
- 本人の勘違いにより、本来意図していない内容の遺言になってしまった
- 例:既に死亡した人物に財産を遺贈する遺言 など
実務上の対策:
- 遺言作成時の録音や撮影などによる記録を残す
- 内容と背景を附言事項で補足し、意図を明確にしておく
まとめ
遺言書が無効と判断される典型的な理由としては、「遺言能力の欠如」「形式的な不備」「詐欺・強迫・錯誤」があります。
これらは法律の定めに沿っていないか、本人の真意によらない内容であることが原因です。
確実に有効な遺言とするためには、正確な知識と慎重な作成、必要に応じた専門家の関与が重要です。