遺言による遺留分の対策方法
遺言書を作成する際、「できるだけ自由に財産を配分したい」と思う一方で、遺留分制度が大きな制約となることがあります。
遺留分は法律で保障された最低限の取り分であり、これを侵害すると、後に遺留分侵害額請求を受ける可能性があります。
そこで、遺留分を考慮しながらも、自分の意思をできる限り実現するための遺言の書き方・工夫について解説します。
1. 遺留分を侵害しないように遺言を作成する
もっとも確実な方法は、遺留分を侵害しないように財産を配分することです。
法定相続人の構成と遺留分割合をあらかじめ計算し、それを下回らないようにすれば、遺留分侵害額請求のリスクを回避できます。
例:
- 配偶者と子1人 → 子の遺留分は相続財産の1/4
- 子の取り分が1/4以上となるように配分すれば、侵害には当たらない
2. 遺留分に配慮した附言事項を記載する
どうしても一部の相続人に多く財産を残したい場合は、その理由を「附言事項」として丁寧に説明することで、感情的な対立や請求の抑制につながることがあります。
附言事項の例:
長男には、私たち夫婦の生活や介護に尽くしてくれた感謝の気持ちを込めて多くの財産を残すことにしました。
次男にも感謝していますが、今回はこのような分け方といたします。
どうか兄弟で争うことなく、私の意思を尊重してもらえることを願っています。
3. 遺留分を考慮した代償分割・金銭の用意
不動産などの分割しづらい財産を特定の相続人に集中させたい場合は、遺留分を侵害する他の相続人に金銭を渡す形での調整も有効です。
遺言に「○○に不動産を相続させ、代わりに金300万円を○○に渡す」などと明記しておくことで、後の混乱を防ぐことができます。
また、遺留分侵害額請求に備えて、一定の現金や保険金を残すことも一つの対策です。
4. 相続人との事前調整・遺留分放棄
遺言者の生前に、相続人と話し合いを行い、あらかじめ納得を得ておくことも重要な対策の一つです。
また、特別な事情がある場合は、相続人に家庭裁判所の許可を得て遺留分の放棄をしてもらうことも可能です(民法1043条)。
ただし、遺留分放棄は家庭裁判所の審査を伴い、簡単ではありません。あくまで限定的な手段と考えるべきでしょう。
5. 家族信託や保険などを組み合わせる
遺言のみでは対処しきれない場合、家族信託や生命保険の指定などを組み合わせて、相続財産に含まれない形で希望を実現することも可能です。
ただし、これらも遺留分侵害と判断される余地があるため、慎重な設計が必要です。
まとめ
遺留分制度は、相続人にとって大きな保護となる一方、遺言の自由を一定程度制限する制度でもあります。
自分の意思を尊重してもらいながら、相続人間のトラブルを避けるためには、遺留分に十分配慮した遺言設計が不可欠です。
必要に応じて、専門家に相談し、遺留分に配慮した財産配分や文案作成を行うことをおすすめします。