遺言書と家庭裁判所の関係
遺言書の内容を実現するうえで、家庭裁判所の関与が必要となる場面があります。
これは主に、遺言書の真正性の確認や、特別な効力を発揮する手続きにおいて行われるものであり、遺言書の種類によって必要性が異なる点に注意が必要です。
1. 自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合の「検認」
自筆証書遺言や秘密証書遺言を用いて相続手続きを行うには、原則として家庭裁判所で「検認」手続きを経る必要があります(民法1004条)。
これは、遺言書の偽造・変造を防止し、形式の存在を公的に記録するための手続きであり、内容の有効性を審査するものではありません。
検認の流れ:
- 相続人または受遺者が、家庭裁判所に検認を申し立てる
- 家庭裁判所が相続人全員に通知
- 期日に裁判所で開封・検認(相続人の出席が求められる)
- 検認済証明書の発行を受けて、手続き開始
ただし、法務局の自筆証書遺言保管制度を利用している場合は検認が不要です(2020年7月以降)。
2. 危急時遺言など特別方式遺言の「確認」
危急時遺言(死亡が差し迫った状況で作成する口述の遺言)などは、作成から20日以内に家庭裁判所へ「遺言の確認申立て」を行わなければなりません(民法976条・977条)。
これを怠ると、遺言は無効となります。
3. 遺言執行者の選任申立て
遺言書に遺言執行者の指定がない、または辞退・死亡により不在の場合は、相続人や利害関係人が家庭裁判所に対し「遺言執行者選任申立て」を行うことができます(民法1010条)。
家庭裁判所の選任が必要なケース:
- 遺贈や認知、相続人の排除など執行者でなければできない内容が含まれる場合
- 相続人間に対立があり、自主的な執行が困難な場合
4. 相続人の廃除・その取消し
遺言により、特定の相続人を廃除する(相続権を奪う)ことが記載されている場合は、遺言執行者が家庭裁判所に「廃除の申立て」を行う必要があります(民法893条)。
同様に、過去に廃除した相続人の廃除取消しを遺言でする場合も、裁判所への申立てが必要です。
5. その他:遺言内容に異議が出た場合
相続人や受遺者が遺言の有効性そのものに疑義を持つ場合、家庭裁判所で遺言無効確認の訴えが提起されることもあります。
たとえば以下のような場合です:
- 遺言者に遺言能力がなかった疑いがある
- 強迫・詐欺により書かされたと主張される
- 署名・日付・押印が形式要件を欠いている
- 遺言が偽造された疑いがある
このような紛争となった場合は、家庭裁判所での審理・判断が不可欠となります。
まとめ
家庭裁判所は、遺言書が確実に・適切に執行されるための公的なチェック機関として、一定の場面で関与します。
特に、自筆証書遺言の検認や、遺言執行者の選任、遺言の確認手続きなど、相続実務において重要な役割を果たします。
スムーズな手続きを進めるためにも、遺言の内容と形式、裁判所の関与が必要か否かを事前に把握しておくことが大切です。