遺言が効力を持つタイミング
遺言書は、生前に作成されるものですが、その内容が法的な効力を持ち、実際に執行されるのはいつなのかという点については、意外と誤解が多くあります。
ここでは、民法の規定と実務の流れを踏まえ、遺言が効力を持つ時期をわかりやすく解説します。
1. 遺言はいつから効力を持つのか?
民法では、遺言は遺言者の死亡によって効力を生じると定められています(民法985条)。
つまり、遺言書が作成された時点では効力は発生しておらず、あくまで死後に効力が発生するという点が大前提です。
したがって、生前に「この財産は将来あなたに遺すつもりだ」と伝えていても、それは法律上の拘束力はなく、遺言として効力を持つのは死亡時です。
2. 効力の発生と「執行」は別である
効力が発生したからといって、すぐに相続や名義変更ができるわけではありません。
遺言内容を現実に実行に移すには、「遺言の執行」という手続きが必要です。
具体的には、以下のようなステップを踏むことになります:
- 遺言者の死亡
- 遺言書の発見・確認
- (自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合)家庭裁判所での検認
- 遺言執行者による手続き(財産の名義変更、遺贈の実行など)
したがって、「効力が発生する=すぐに相続が完了する」わけではなく、実際の手続きには一定の時間と段取りが必要になります。
3. 遺言の一部が生前に影響することもある
原則は死亡によって効力を生じますが、以下のような特例的な場面では、生前にも影響を及ぼす可能性があります:
- 遺言執行者の指定:遺言で指定されていても、実際に就任するのは死亡後。
- 認知の遺言:遺言によって非嫡出子を認知する内容は、死亡によって効力を生じ、出生届などの準備が必要になります。
- 排除・廃除:推定相続人の廃除を遺言でする場合、家庭裁判所の手続きが必要です。
このように、死亡をもって効力が発生することを前提としつつ、事前に必要な準備や確認がある項目も存在します。
まとめ
遺言書は、遺言者の死亡によって法的効力を持ち始めるのが原則です。
ただし、その内容を実現するには「遺言の執行」という別のステップが必要であり、検認や遺言執行者の活動によって、初めて現実的に相続が動き出します。
遺言書を残す側も受け取る側も、効力の発生と執行の違いを正しく理解しておくことが大切です。