委託者=受益者型の信託とは
家族信託の中でも、特に多くのご家庭で使われている形が「委託者=受益者型」の信託です。これは、その名のとおり、財産を託す人(委託者)と、財産から利益を受ける人(受益者)が同じであるという形です。
たとえば、次のようなケースを考えてみましょう。
80歳のAさんは、自分が将来認知症になったときに備えて、長男Bさんに財産管理を任せたいと考えています。
そこで、Aさんは自分の持っている自宅と預金を、信託契約によってBさんに託しました。
でも、その家に住み続けるのも、預金を使って生活するのも、Aさん自身です。
このようなケースでは、
- 委託者:Aさん(財産の持ち主)
- 受託者:Bさん(長男。管理・運用を行う)
- 受益者:Aさん(利益を受け取る人)
つまり、財産を任せるけれど、その財産は自分のために使ってもらうという形になります。これが「委託者=受益者型」の信託です。
なぜこの形が多いの?
このタイプの信託が多い理由は、「親が自分の財産を、信頼できる子どもに託して管理だけしてもらう」というシンプルなニーズにぴったり合っているからです。
また、受益者が委託者本人なので、財産の使い道が本人の生活のためであることが明確であり、家族間の誤解やトラブルを防ぎやすいという利点もあります。
相続とはどう違うの?
「子どもに財産を託す」と聞くと、「相続するの?」と思われるかもしれませんが、この段階では財産の所有権は移っていません。
信託によって子ども(受託者)が財産を「預かって管理する」立場になるだけで、あくまで受益者(親)のために使うことが目的です。
そのため、贈与税などの課税も通常は発生しません(※税務の詳細は別章で詳しく説明します)。
メリットと注意点
- メリット:認知症になっても財産を家族が管理できる/柔軟な活用が可能
- 注意点:信託契約書をきちんと作成し、目的や財産の範囲を明確にしておく必要がある
「委託者=受益者型」の信託は、家族信託を始めて考える方にとって、もっとも導入しやすい基本形です。
この仕組みを土台にして、さまざまなニーズに合わせた信託設計をしていくことが可能です。