自筆証書遺言を勝手に開封してしまった場合の影響と対応
自筆証書遺言は、被相続人が自ら書いた遺言書のうち、法務局に預けていない「保管制度を利用していないもの」を指します。
この自筆証書遺言については、相続が開始した後、家庭裁判所で「検認」を受ける前に開封してはならないと民法で定められています(民法1004条)。
遺言書をうっかり開封してしまった場合、どのような影響があるのか、そしてどう対応すべきかを以下で解説します。
1. 自筆証書遺言の開封に関する法的ルール
民法1004条第3項において、次のように定められています。
「自筆証書遺言を保管している者またはこれを発見した者は、家庭裁判所に提出し、その検認を受けなければ、これを開封してはならない。」
つまり、検認手続前に勝手に遺言書を開封することは原則として違法行為とされ、違反者には過料(5万円以下)が科される可能性があります(家事事件手続法第223条)。
現実には、過料が科されるケースは悪意がある場合などに限られ、非常に稀です。
2. 勝手に開封してしまった場合の実務上の扱い
開封してしまったからといって遺言書自体が無効になるわけではありません。
しかし、家庭裁判所での検認を受ける際には「原本性の証明」が必要となり、遺言書が真正に作成されたものであることを立証する責任が申立人に生じます。
【主に求められる確認事項】
- 遺言書に手を加えたり、書き換えたりしていないこと
- 発見状況や保管状態、開封した経緯などを詳しく説明できること
- 原本とされる遺言書に訂正跡や損傷がないことを証明できる状態であること
3. 裁判所に提出する補足資料・対応策
開封済みの自筆証書遺言を検認してもらうためには、以下のような資料や説明が求められる場合があります。
- 開封前の写真や動画(封筒に「遺言書在中」と記載がある封印状態など)
- 開封の経緯を記載した上申書(誰が、なぜ開封したのかを説明)
- 遺言書と筆跡が一致する他の書類(本人の日記・手紙・署名入り契約書など)
- 遺言書に訂正がないことを確認できるよう、きれいな保管状態を保つこと
家庭裁判所では、こうした補足資料とともに、申立人や関係者からの事情聴取が行われることもあります。
4. トラブル回避のために重要なこと
① 遺言書を発見したらすぐ開けずに封を保ったまま保管
開封せずに速やかに家庭裁判所へ検認の申立てを行うことが最善です。
② 誤って開封してしまったら、正直に経緯を説明
隠すことは信頼を損ね、相続人間の不信感を助長する原因となります。
③ 開封された遺言書を理由に遺言無効を主張される可能性も
他の相続人から「改ざんされたのでは」と疑われるリスクがあるため、客観的な証拠を残して対応することが重要です。
5. 検認が不要となる場合(保管制度利用時)
なお、法務局の自筆証書遺言書保管制度を利用していた場合は、検認手続は不要です。
この制度では、開封の違法性や改ざんの懸念がなく、安全性が確保されているため、後の相続手続きが円滑になります。
6. まとめ
自筆証書遺言は、開封前に必ず家庭裁判所で検認を受ける必要があるというルールを理解しておくことが大切です。
うっかり開封してしまった場合でも、遺言書が無効になるわけではありませんが、正当性を証明するための対応と説明責任が求められます。
万が一に備えて、遺言書の扱いには慎重を期し、専門家への相談を通じて適切に対応することが望まれます。