一次相続と二次相続の違い
相続には「一次相続」と「二次相続」があります。これは、誰が亡くなったかによって発生する相続の区別であり、それぞれにおいて相続人の構成や税負担が大きく異なります。
将来的な相続税対策を考えるうえでは、この一次・二次相続を一体として設計する視点が重要です。
1. 一次相続とは
一次相続とは、夫婦のうち先に亡くなった方の相続のことを指します。たとえば、父が先に亡くなった場合、その相続が一次相続となります。
【一次相続の相続人の例】
- 配偶者(妻)
- 子(1人以上)
一次相続では配偶者が相続人に含まれるため、「配偶者控除」が使える点が大きな特徴です。
2. 二次相続とは
二次相続とは、一次相続で残された配偶者が亡くなった際の相続をいいます。たとえば、上記のケースで後に母が亡くなった場合、それが二次相続となります。
【二次相続の相続人の例】
- 子(一次相続時と同じ)
二次相続では配偶者控除が使えず、控除枠が減るため、一次相続よりも相続税が発生しやすくなります。
3. 一次相続と二次相続の主な違い
| 比較項目 | 一次相続 | 二次相続 |
|---|---|---|
| 相続人 | 配偶者+子 | 子のみ |
| 基礎控除額 | 3,000万円+600万円×人数(例:配偶者+子2人→4,800万円) | 3,000万円+600万円×人数(例:子2人→4,200万円) |
| 配偶者控除 | あり(1億6,000万円または法定相続分まで非課税) | なし |
| 小規模宅地特例 | あり(同居・所有要件を満たせば) | あり(継続居住・所有が必要) |
| 相続税が発生する可能性 | 低い | 高くなりやすい |
4. 実務上の注意点
- 一次相続では、配偶者に財産を集中させれば相続税は抑えられるが、二次相続時に大きな税負担となる可能性がある
- 一次相続の時点で二次相続を見据えた分割・相続税試算を行うことが重要
- 特に不動産や株式など、評価額の高い財産の配分には注意が必要
5. まとめ
一次相続と二次相続では、控除や特例の適用状況、相続人の構成が異なるため、それぞれを別々に考えるのではなく、セットで設計することが重要です。
「今、どれだけ税金がかかるか」だけではなく、「将来、どこでどれだけ税金が発生するか」を見据えた対策こそが、賢い相続の第一歩です。