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相続税の取得費加算の特例とは - 相続財産を売却する際の譲渡所得対策
相続税の申告をしたあと、相続した財産を売却した場合、譲渡所得税(いわゆる不動産の売却益にかかる税)が発生する可能性があります。
このとき、一定の条件を満たすことで、支払った相続税の一部を「取得費に加算」することができる制度が、「取得費加算の特例」です。
この制度を活用することで、譲渡所得税を軽減できる可能性があります。
「取得費加算の特例」は、相続税と譲渡所得税の“二重課税状態”を避けるための調整措置です。
3年10か月以内に売却すれば、その土地に対応する相続税分を取得費に加算でき、譲渡益=課税対象を減らすことができます。
控除によって相続税を支払っていない場合は適用されません。
1. 取得費加算の特例とは
相続または遺贈により取得した財産を、相続税の申告期限の翌日から3年以内に譲渡した場合、その財産の譲渡所得を計算する際に、納付した相続税の一部を取得費に加算することができるという制度です(所得税法第59条)。
【主な要件】
- 相続または遺贈により取得した財産であること
- 譲渡した時期が相続税の申告期限(10か月)から3年以内の年の年末までであること(=実質3年10か月以内)
- その財産に対して相続税を実際に納付していること
2. 譲渡所得の基本的な計算式
譲渡所得 = 譲渡価額 -(取得費 + 譲渡費用)
ここで、「取得費」に相続税の一部を加算できるのが、この特例の最大の特徴です。
3. 具体例で見る取得費加算の効果
【事例】
- 父から相続した土地を2年後に5,000万円で売却
- 取得費(父が取得した当時の購入価格):1,000万円
- 譲渡費用(仲介手数料等):200万円
- 相続税として納付した額のうち、当該土地に対応する分:800万円
【通常の譲渡所得計算】
5,000万円 -(1,000万円 + 200万円)= 3,800万円(課税対象)
【取得費加算の特例適用後】
5,000万円 -(1,000万円 + 200万円 + 800万円)= 3,000万円(課税対象減少)
→ この制度を活用することで譲渡所得が800万円軽減され、それに伴い課税される所得税・住民税も大きく減少します。
4. 注意点と実務上のポイント
- 土地・建物以外(株式や投資信託等)にも適用可能ですが、財産ごとの相続税額配分が必要です
- 取得費加算を適用する場合は、確定申告書にその旨を記載し、相続税申告書の写しや納付書の控え等の添付が必要です
- 財産を譲渡していない相続人が納付した相続税は加算できません(その人が譲渡した場合のみ適用)
- 相続税を延納・物納している場合は対象外になるケースもあります
5. まとめ
相続税の取得費加算の特例は、相続した財産を短期間のうちに売却した場合の税負担を大きく軽減できる可能性のある制度です。
不動産などの譲渡予定がある場合は、相続税の申告時点から譲渡の時期・方法を意識しておくことが大切です。
実際の適用には専門的な判断が求められるため、税理士などと連携し、取得費加算の適用可否と効果を試算したうえで、確定申告に備えることが重要です。