目次
遺留分侵害額請求の方法と期限
遺言や生前贈与によって、法定相続人のうち一部の者の取り分が極端に少なくなった場合、遺留分を侵害された相続人は、他の取得者に対して「遺留分侵害額請求」をすることができます。
この請求は金銭による支払いを求める手続きであり、2019年の民法改正により、原則として金銭請求に一本化されました。
1. 遺留分侵害額請求とは
遺留分侵害額請求とは、被相続人の遺言や生前贈与などにより遺留分を侵害された場合に、その侵害額に相当する金銭を請求する権利を行使することです。
物そのものを返せと求めるのではなく、金銭的な補償を求める形式で行われます。
2. 請求できる人(遺留分権利者)
遺留分を請求できるのは、法定相続人のうち以下の者です。
- 配偶者
- 子またはその代襲相続人
- 直系尊属(被相続人に子がいない場合)
※ 兄弟姉妹には遺留分がありません。
3. 遺留分侵害額請求の方法
請求は原則として内容証明郵便で行うのが望ましく、後々の証拠として残る形にしておく必要があります。
以下の手順で進めるのが一般的です。
【主な手続きの流れ】
- 被相続人の遺言内容・贈与内容を確認
- 遺産全体を把握し、遺留分の計算を行う
- 侵害額が明らかになったら、取得者に対して内容証明郵便で請求通知
- 話し合いで支払金額・支払方法などを合意
- 合意が得られない場合は、家庭裁判所に調停・訴訟を申し立てる
4. 内容証明郵便の記載例(概要)
差出人:山田 花子(遺留分権利者) 受取人:山田 太郎(遺贈を受けた者) 内容: 令和◯年◯月◯日死亡の被相続人 山田一郎の相続に関し、貴殿が取得した財産のうち◯◯万円が私の遺留分を侵害していると判断しました。 つきましては、民法第1046条に基づき、◯◯円の遺留分侵害額の支払いを請求いたします。 請求額の支払期日:令和◯年◯月◯日まで
5. 遺留分侵害額請求の期限
この請求には時効があり、以下のいずれか早い方が適用されます。
- 相続の開始および遺留分の侵害を知った時から1年以内
- 相続開始から10年以内(たとえ知らなくても)
例えば、遺言が存在することを知り、その内容が自身の遺留分を侵害していると認識した日が「起算点」となります。
6. 実務アドバイス
遺留分侵害額請求は、感情的な争いに発展しやすく、金銭の支払能力や交渉の難航が予想される場面も多くあります。
そのため、事前に財産の正確な把握と遺留分の計算を行ったうえで、内容証明による意思表示をしっかり残しておくことが非常に重要です。
また、当事者間での交渉が難しい場合は、家庭裁判所での調停申立てを行うことで、冷静な話し合いによる解決が図れます。
遺言・贈与の内容や相続人構成によって判断が複雑になる場合は、行政書士や弁護士などの専門家に相談することで、確実かつ円満な解決を目指すことができます。