Q. 音声や動画で遺言を残すことはできますか?
A. いいえ、音声や動画による遺言は、原則として法的に有効な遺言とは認められません。
日本の民法では、遺言は法律に定められた方式に従って書面で作成しなければならないとされており、録音・録画による遺言には法的効力が認められないのが現状です。
【解説】
■ 民法における遺言の方式
民法では、遺言の有効な方式として以下のものが定められています(民法第960条〜)。
- 自筆証書遺言
- 公正証書遺言
- 秘密証書遺言
- 特別方式(危急時・隔絶地など)
これらはいずれも、書面(紙の文書)によって、日付・署名・押印などを備えて作成されなければなりません。
■ 音声や動画は「方式」に該当しない
録音や動画(ビデオレター、スマートフォンの録画など)は、遺言者の意志が明確に表現されていたとしても、民法の定める「遺言の方式」に該当しないため、原則として無効となります。
■ ただし補助的な証拠として使える可能性はある
音声や動画が遺言の意思能力を証明する参考資料として利用されるケースはあります。
たとえば、自筆証書遺言の作成時に「本人が理解して書いていたこと」を示す補助証拠として、医師の診断書や作成時の映像とともに活用されることがあります。
また、遺言が争いになった際に「本人の本当の意志」を探るために、裁判で証拠の一つとして提出されることもありますが、単独では法的効力を持ちません。
■ 実際に裁判で争われたケースも
過去には「録音された遺言の内容を有効にしてほしい」との主張が争われたケースもありますが、裁判所はいずれも『法定の方式に従っていないため無効』と判断しています。
つまり、音声・動画=遺言と認められる判例はありません。
【実務的アドバイス】
- 遺言としての法的効力を持たせたい場合は、必ず書面で作成すること
- 動画や音声は「補足資料」として活用することは可能(例:遺言能力の証明、作成意思の補強)
- 特に争いが予想される場合は、公正証書遺言の作成と合わせて映像記録を残しておくと安心
【まとめ】
音声や動画による遺言は、民法上の有効な遺言とは認められていません。
遺言として効力を持たせるためには、必ず法律に定められた方式(書面・署名・日付など)を守る必要があります。
映像や録音は、あくまで補助的な役割にとどまることを理解し、正式な遺言書を残すことが何より重要です。