帳簿・通帳の管理と税務申告
受託者の基本的な管理責任
信託契約が開始されると、信託財産の管理・運用は受託者が担うことになります。
その中で最も重要な責務のひとつが、帳簿と通帳による信託財産の明確な管理です。
信託財産は受託者の個人財産とは区別して管理する必要があり、帳簿の記録と通帳の明示的な分離は、その証となるものです。
帳簿の作成と管理方法
家族信託においては、法的には法人のような厳格な帳簿作成義務はありませんが、受託者には「善管注意義務」や「分別管理義務」が課されます。
そのため、収支の記録・残高・支払内容などを整理した帳簿を作成しておくことが望ましいとされています。
帳簿には以下のような内容を記録します:
- 収入(賃料収入・配当・利息など)
- 支出(修繕費・税金・生活支援費など)
- 預金残高・現金の動き
- 信託財産の売却・取得記録
帳簿の形式に決まりはありませんが、手書きでもExcelでも構いません。
実務上は、会計ソフトや専門家のサポートを受けると安心です。
信託専用通帳の管理
通帳は信託口口座を用いて管理します。
ここに受託者個人の入出金を混ぜることは避け、信託財産の出入りだけを記録する専用口座として運用する必要があります。
- 家計費との混在を避ける
- 帳簿と突合して説明がつくようにしておく
- 受益者(親族)に定期的に収支報告する体制を整える
信託口座を通じた支出は信託目的に沿ったものであることが明確に説明できることが重要です。
税務申告の対応
家族信託では、信託財産から発生する所得は「受益者」に帰属するのが原則です。
つまり、受益者が賃料収入などを得る構造であれば、その所得は受益者本人が確定申告を行う必要があります。
信託の形態によって税務対応は次のように変わります:
| 信託形態 | 所得の納税義務者 |
|---|---|
| 委託者=受益者 | 委託者本人 |
| 委託者≠受益者 | 受益者(贈与税の検討も必要) |
| 受益者が複数 | 各受益者が自分の持分に応じて申告 |
また、次のような場面では税理士との連携が特に重要です。
- 不動産の売却益が出たとき(譲渡所得)
- 収益が複数の受益者に分配される場合
- 信託が終了したときの財産の帰属に伴う課税
定期的な報告と家族への説明
信託は“透明性”が信頼のカギです。
帳簿や通帳の管理内容をもとに、年1回などの定期的な報告を家族に行うことで、不信感やトラブルを防ぐことができます。
まとめ
- 信託財産は帳簿と通帳で明確に管理する必要がある
- 通帳は専用の信託口口座を用い、受託者の財産と分けて運用する
- 所得の納税は受益者が原則。信託の形によっては税理士の関与が重要
- 定期的な収支報告は、信託の信頼性を高める
家族信託は「契約して終わり」ではなく、運用を丁寧に続けていくことが成功のポイントです。
管理と説明の積み重ねが、家族の安心につながります。