遺体の引き取りと火葬、納骨
死亡直後に求められる対応とその現実
人が亡くなった直後、最も速やかに行う必要があるのが遺体の引き取りです。病院や介護施設などでは、一定時間内に遺体を搬出するよう求められるのが通常であり、 引き取り手が現れない場合、医療機関や警察が困難な対応を強いられることになります。
本来であれば親族が対応すべきこれらの手続きですが、親族との関係が希薄であったり、身寄りがいない場合には、受け手が不在となるおそれがあります。 このようなケースに備え、死後事務委任契約において「遺体の引き取り」を明記しておくことで、契約に基づき第三者(受任者)が手続きすることが可能となります。
火葬手続きとその限界
火葬を行うには、死亡届とともに「火葬許可申請書」の提出が必要となります。この申請は、法律上は届出義務者(親族等)によって行うことが前提とされており、 契約に基づく第三者による申請については、自治体ごとの判断に委ねられているのが現状です。
そのため、死後事務委任契約に基づいて火葬許可申請を行ったとしても、必ずしも受理されるとは限らず、申請が認められない場合には、 相続人がいるときはその者から改めて委任を受ける、あるいは協議の上で自治体が行政対応を行うといった補足的な措置が必要となることもあります。
納骨に関する契約と宗教的・社会的配慮
火葬後の遺骨の納骨についても、事前に契約しておいた墓地や納骨堂に埋葬する手続きが必要となります。これも死後事務委任契約により受任者が対応することが可能ですが、 埋葬先との契約行為を代理するにあたっては、施設側が親族以外との契約を受け入れるかどうかが鍵となります。
特に寺院や宗教法人が運営する施設の場合、本人の信仰や親族の了解がなければ受け入れを拒まれる可能性もあるため、本人の生前の意思や希望する納骨先との 調整をあらかじめ済ませておくことが重要です。
制度と実務のあいだにあるグレーゾーン
遺体の引き取り、火葬、納骨はいずれも制度的には明確な手続きが存在しますが、死後事務委任契約によって第三者がそれを実行する場合、 実務上は自治体や施設の判断に左右される場面が多くあります。契約があっても「家族以外」として拒否される可能性を常に念頭に置きつつ、 他の法的手段や関係者との調整を視野に入れた設計が求められます。
よって、これらの事項を死後事務委任契約で確実に実現したい場合には、委任事項を具体的かつ詳細に定めておくとともに、 契約書を公正証書で作成する、関係先と事前協議をしておくなど、実務的な下支えが不可欠といえます。