住居の整理、残置物の処分と売却 | 死後事務委任で依頼できること | 死後事務委任

住居の整理、残置物の処分と売却

死後に残される住居とその問題点

死亡後に残される住居は、持ち家・賃貸を問わず、早急な整理・処分が必要となる資産・空間のひとつです。単身者であれば、住居の明け渡し手続きを行う親族がいないため、 遺品の放置や原状回復義務の履行がなされないまま、大家や管理会社、近隣住民に多大な迷惑をかけることがあります。

死後事務委任契約においては、受任者が住居の整理、家財の処分、契約の解約、鍵の返還までを包括的に担う内容とすることで、スムーズな対応が可能となります。

賃貸物件における対応

賃貸借契約は、本人の死亡により終了することが原則とされます。ただし、契約の解除通知、家財の撤去、原状回復、鍵の返却といった実務処理は、誰かが担わなければ進みません。

死後事務委任契約の中で、受任者にこれらの処理を任せる内容が明記されていれば、貸主(大家や管理会社)との交渉や手続きが可能です。 ただし、貸主側が「法定相続人でなければ鍵を返却できない」「遺品処分は勝手にしてほしくない」などの対応を取ることもあるため、 事前に契約上の根拠を提示し、協議のうえで対応を進める必要があります。

残置物(遺品)の処分と法的注意点

故人の家財や生活用品、金銭的価値のある動産などは、法的にはすべて「相続財産」にあたります。そのため、遺品を第三者が処分することには法的リスクが伴います。

死後事務委任契約において「遺品の処理・処分権限」を明示しておくことで、受任者が整理・処分を行う実務的な根拠になります。 ただし、相続人がいる場合には、その権利に配慮しつつ、了解を得て進めるのが望ましいとされます。

相続人が存在しない場合(相続人不存在)には、家庭裁判所で相続財産管理人が選任されるまで、事実上動産類の処分が進まないこともあります。 こうした場合に備え、死後事務委任契約とあわせて信託や遺言で処理方法を定めておくとより確実です。

売却処分できる物品とその扱い

家財の中には、リサイクル可能な家具・家電、骨董品、貴金属など、第三者に売却することで現金化できるものがあります。 受任者がこれらを売却処分するためには、契約に明確にその旨を定めておくことが必要です。

また、現金化した代金の帰属についても、契約書に「精算後、本人の供養費に充てる」「指定団体へ寄付する」などの定めを置くことが可能です。 処分方法や金銭の扱いについて契約内容が曖昧な場合、後のトラブルや誤解を生む原因となるため、具体的に記載しておくことが実務上有効です。

持ち家の場合の整理と限界

故人が所有していた不動産(自宅など)については、死後事務委任契約では処分(売却)はできません。不動産の処分・名義変更は民法上の「相続」に属し、 相続人または相続財産管理人によって行われる必要があります。

ただし、死後事務委任契約において「相続人または管理人が決定するまでの間、維持・管理を行う」という趣旨の委任は可能です。 たとえば、戸締まり、管理会社への連絡、近隣への対応など、一次的な管理・保全を受任者が行うことは現実的な対応策とされています。

整理業者・不用品処分業者との連携

実際の遺品整理や家財処分は、専門の業者に委託することが一般的です。死後事務委任契約に基づき、受任者が業者との契約・立会い・精算を行う形で進められます。 特に孤独死などで清掃・除菌が必要な場合には、特殊清掃業者の対応も必要となることがあります。

業者選定の基準、費用の上限、支払方法(預かり金から精算する等)についても、契約書内に定めておくとより安全です。

【注意事項】
本記事は、法律に関する一般的な情報を提供するものであり、個別具体的な案件についての助言を行うものではありません。特定の事案や状況に応じた判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

また、正確性を期すよう努めておりますが、本記事の内容についての完全な正確性や最新性を保証するものではなく、本記事の利用により生じたいかなる損害についても当方は一切の責任を負いかねます。

法令や規制は頻繁に変更される可能性がありますので、必要に応じて最新の情報をご確認いただくことをお勧めいたします。
死後事務委任
タイトルとURLをコピーしました