公共料金や携帯電話の解約
死後に必要となる各種契約の整理
死亡後には、故人が契約していたさまざまなサービスを整理・解約する必要があります。代表的なものとしては、電気・ガス・水道といった公共料金、 固定電話やインターネット回線、携帯電話、新聞や定期購入サービス、インターネット上の各種サブスクリプション契約などが挙げられます。
これらは放置すると料金の未払いが発生し、財産の浪費や関係者への督促など、不要なトラブルにつながる可能性があります。 死後事務委任契約において、これらの契約を受任者が解約・精算できるよう明記しておくことで、スムーズな手続きが可能になります。
公共料金の解約と精算
公共料金の契約は、通常、契約者本人が死亡した時点で解約の対象となります。ただし、正式な解約・清算手続きには、死亡の事実を証明する書類(死亡診断書の写しや戸籍謄本等)とともに、 受任者の身分証明書や委任契約書の提示を求められることがあります。
電気・ガス・水道については、多くの地域で委任による解約が認められていますが、地域や供給事業者により対応が異なる場合もあるため、 事前に契約先を整理し、必要書類や手順を確認しておくことが実務上有用です。
携帯電話の解約と慎重な対応の必要性
携帯電話の解約は、単なる通信契約の終了にとどまらず、近年では故人の死後事務全体に影響を及ぼす重要な要素となっています。 多くのオンラインサービス──たとえばインターネットバンキング、SNS、クラウドストレージ、サブスクリプション型サービスなど──では、 本人確認やログイン時にSMS認証を用いるケースが一般的です。
そのため、携帯電話を早期に解約してしまうと、これらのサービスへのアクセスが困難となり、解約手続き自体が進められなくなるおそれがあります。 特にパスワードが不明、あるいは二段階認証が設定されている場合には、携帯番号が使用不可となった時点で手詰まりになることも珍しくありません。
このような事態を避けるためには、携帯電話の解約を死後事務の後半に回し、まずはスマートフォンを通じて必要なサービスの解約、 アカウントの削除・整理を済ませた上で、最終的に携帯回線を停止する、という順序で進めることが推奨されます。
オンライン契約・サブスクリプションの複雑化
故人が利用していたオンラインサービスの中には、郵送や電話では解約できず、ログインして画面上から操作することを前提としているものもあります。 この場合、携帯電話番号が使えないことによりSMS認証が突破できず、受任者であってもアクセスができないという問題が発生します。
死後事務委任契約の中で、これらの契約の解約やアカウント整理についても明示し、可能であれば「ID・パスワード・SMS認証に関する取扱い」について、 生前に整理・共有しておくことが望ましいといえます。特にスマートフォンが「個人のデジタル資産管理の中核」となっている現代において、 携帯電話の解約は、タイミングを誤ると死後事務全体に支障を来すリスクを孕んでいます。
事前の情報整理と段取りの重要性
契約の有無や支払い方法、IDや認証手段といった情報は、本人以外にはわかりづらいものです。死後事務委任契約の内容に加えて、 あらかじめ「契約リスト」や「デジタル遺品リスト」を残しておくことが、実務上非常に大きな助けになります。
特に、通信・金融・娯楽などの分野でインターネット契約が広がる現代では、単に「契約の整理を任せる」だけでなく、「どの順序で何をするか」を想定した設計が、 実効性ある死後事務の鍵となります。