増える「おひとりさま」と無縁社会の問題
現代日本では、単身世帯が急速に増加しており、いわゆる「おひとりさま」と呼ばれる方々が社会の中で一定の割合を占めるようになってきました。 総務省のデータによれば、すでに全世帯の約4割が単身世帯であり、その傾向は高齢層においても顕著です。 このような背景のもと、死後の対応に課題を抱えるケースが増えており、社会的な備えが求められる状況にあります。親族の全くいない人も増加しています。
特に深刻化しているのが、「無縁社会」と呼ばれる現象です。人と人とのつながりが希薄化し、親族・知人などの支援を受けられない高齢者や単身者が増える中で、 死後に関する手続きや供養といった重要な事柄が、適切に実施されないまま放置されるリスクが現実のものとなっています。
死後に発生する可能性のある主な課題
「おひとりさま」の死後には、以下のような手続き上・社会的な問題が生じることがあります:
| 課題 | 具体的な内容 |
|---|---|
| 遺体の引き取り | 家族がいない場合、病院や警察が引き取り手を見つけられず、長期間安置されることがある。 |
| 火葬・埋葬 | 誰が火葬許可申請を行うかが不明確で、自治体による対応を余儀なくされることも。 |
| 住居の原状回復・遺品整理 | 賃貸物件であれば原状回復義務が残るが、契約者が死亡しているため対応が進まない。 |
| 行政・金融機関等への届け出 | 死亡届、年金停止、公共料金の解約、預貯金の凍結など、各種手続きが滞る。 |
| 葬儀・供養 | 本人の希望が不明なまま、簡素な火葬のみで済まされるケースも見られる。 |
制度の隙間に取り残される人々
日本には法定相続制度や後見制度、生活保護制度などが整備されていますが、死後に関する事務処理については、 必ずしも包括的な制度が存在しているとは言えません。特に、身寄りのない単身者が死亡した場合、 公的な支援の枠組みでは対応が難しいケースが多く、自治体が個別に判断を下すことになります。
死後の事務処理が未整理のまま放置されると、関係者や地域社会に混乱や負担を及ぼす可能性もあります。 このような背景から、あらかじめ死後の手続きを委任する仕組みや、意思を文書で残すことの重要性が注目されるようになっています。
「おひとりさま」であることは、必ずしも孤独や不安を意味するものではありません。 しかし、社会制度の中でその立場が十分に想定されていない現状では、個々人が自らの最期について一定の準備を行うことが、 自身の尊厳を守る上でも重要な意味を持つと言えるでしょう。