中小企業オーナーの事業承継と信託の有効性
中小企業の経営者にとって、事業承継は避けて通れない大きなテーマです。
特に、自社株をどう引き継ぐかは、会社の将来を大きく左右する重要なポイントです。
高齢化が進み、経営者の多くが70代・80代を迎えるなか、後継者が決まっていてもスムーズに株式を引き継げないという悩みが増えています。
こうした事業承継の課題に対し、家族信託を活用することで柔軟かつ計画的な承継を実現することが可能です。
事業承継における課題
一般的に、事業承継では次のような問題が発生しやすくなります。
- 自社株が経営者本人の名義のままで、後継者が経営判断できない
- 経営者に認知症等が発症すると、株式の凍結状態に陥り、会社運営が停止しかねない
- 後継者がいても、他の相続人との公平性や納得が得られない
- 遺言だけでは、株主総会対策や柔軟な運用に限界がある
家族信託による解決策
こうした課題に対し、家族信託を活用すれば、次のような柔軟な承継体制を構築できます。
- 経営者(親)を委託者として、自社株を信託財産にする
- 後継者(子など)を受託者に指定し、議決権行使を託す(指図は委託者が行う)
- 受益者を経営者本人とし、経営者が存命中は株式の経済的利益を保有
- 経営者の死亡後は、後継者が受益者となり、株式と収益の両方を承継
このような設計により、経営権のスムーズな移行と、経済的利益の段階的な承継が実現します。
信託による「株式の凍結」リスク回避
もし、経営者が認知症を発症した場合、遺言では対応できず、成年後見制度に頼らざるを得なくなります。
しかし成年後見では、議決権行使や株式の譲渡に制限がかかるため、経営判断の自由が著しく損なわれてしまいます。
家族信託を事前に設定しておけば、後継者である受託者が会社の重要な意思決定をスムーズに行えるため、事業の停滞を回避することができます。
家族信託の活用に向いているケース
- 自社株の過半数以上を個人で保有している経営者
- 後継者は決まっているが、まだ株式の名義を移したくない
- 後継者がまだ実力不足で、修行を積ませたい
- 認知症による経営ストップを避けたい
- 株式を誰にどう残すか、段階的に移したい
まとめ
- 事業承継では、株式の承継と経営権の安定移行が重要なテーマ
- 家族信託なら、生前の意思で株式の管理・承継を計画的に設計できる
- 認知症や相続のリスクに備えた、事業の「未来予防策」として有効
「経営者としての引退」だけでなく、「経営権と財産権の引き継ぎ」を段階的に進める――
それができるのが、家族信託の持つ大きな強みです。