親の財産を子が管理するケース事例
ここでは、家族信託を活用して親の財産管理を子が引き受けたケースをご紹介します。
「実際にはどんなふうに使われているの?」という疑問をお持ちの方にとって、イメージが湧きやすくなるはずです。
事例:一人暮らしの母と、実家を心配する長女
【登場人物】
・母(85歳)…自宅で一人暮らし。持ち家があるが管理が大変になってきた。
・長女(58歳)…近所に住み、日常の手伝いをしている。今後の財産管理を心配している。
母はしっかりしているものの、最近少し物忘れが増えてきた。
家の維持管理や手続きは難しくなってきており、将来認知症になったらどうしようという不安があった。
家族信託を使わなかった場合
このまま何もしなければ、母が認知症を発症したとき、自宅は名義が母のままのため、売却や修繕などができなくなる。
預金も凍結され、介護施設の入所費や生活費に充てたくても使えない。
成年後見制度を申し立てるにも、時間・手間・費用がかかる。
家族信託を活用した場合
母がまだ元気なうちに、長女と信託契約を締結。
次のような内容で設計を行った。
- 母を委託者かつ受益者とし、
- 長女を受託者として財産管理を任せる
- 信託財産:母名義の自宅と一部の預金
- 目的:母の生活支援と、将来の施設入所資金の確保
- 必要に応じて自宅を売却し、売却代金を母のために使うことができる
この信託により、母が認知症を発症しても、長女は信託契約に基づいて柔軟に自宅を売却・維持・活用することができる。
施設入所後の費用も、預金からスムーズに支出でき、母の生活に不安が生じにくい。
ポイントと効果
- 親が認知症になっても、子どもが財産を適切に管理できる
- 施設入所・自宅売却など、将来に備えた行動がしやすくなる
- 成年後見制度に頼らずに、家族内で管理を完結できる
このように、家族信託は「もしも」に備えて家族が動きやすい環境を整えておく手段です。
今は何も問題がなくても、“元気な今”だからこそ準備できるのが、家族信託の大きな価値です。