もめない遺言の書き方
遺言は、被相続人の意思を反映させるための重要な手段ですが、書き方や内容次第では、かえって相続人間の争いの火種となることもあります。
ここでは、相続人同士がもめないように配慮された遺言の書き方について、実務の観点から解説します。
1. 法的に有効な形式を守る
最も基本的なことですが、遺言書が形式不備で無効になることを防ぐことが第一です。
特に自筆証書遺言では、日付・署名・押印・全文自筆などの法定要件を厳格に満たす必要があります(民法968条)。
形式の不備があると、相続人間で「これは本物か?」「有効なのか?」という争いに発展する可能性があります。
可能であれば公正証書遺言を選ぶことで、形式的な不備のリスクを大きく減らせます。
2. 財産の配分は具体的かつ公平感を持って
財産の配分が曖昧であったり、偏りすぎていたりすると、相続人間での不信感が高まります。
遺言書には次のような点に注意して記載しましょう。
- 誰に、どの財産を、どの割合で相続させるのかを明確に特定する
- 不動産は登記簿上の表示に基づいて正確に記載する
- 預貯金も金融機関名・支店名・口座番号まで記載する
また、全員を平等に扱う必要はありませんが、配分の理由が理解されるような配慮があると、納得感が高まりやすくなります。
3. 附言事項で思いを伝える
附言事項は法的拘束力はありませんが、なぜこのような遺言内容にしたのかという理由や感謝の気持ちを伝えることができます。
特定の相続人に多く残す場合や、関係が希薄な相続人への配慮をしたい場合などは、感情面のフォローとして非常に効果的です。
附言事項の例:
長男にはこれまで家業を支えてくれた感謝の気持ちを込めて多くの財産を託します。
他の子どもたちに不公平感を与えてしまうかもしれませんが、私の意思として尊重してもらえることを願います。
4. 遺留分に配慮する
たとえ遺言で自由に財産を分配したとしても、遺留分を侵害すれば、後に「遺留分侵害額請求」が行われる可能性があります。
遺言書作成時には、法定相続人の構成と遺留分の割合を把握し、できる限り遺留分を侵害しない内容とするか、補足的な説明や金銭の準備をしておくと良いでしょう。
5. 遺言執行者を指定しておく
遺言の内容を確実に実現するためには、中立的で信頼できる遺言執行者を指定しておくことが重要です。
相続人の一人を執行者にするよりも、第三者(専門家など)を指定することで、感情的な対立を避けやすくなります。
6. 事前に家族とコミュニケーションをとる
内容をすべて伝える必要はありませんが、遺言を作成したことを伝えておく、方向性だけ話しておくことで、遺言の存在に対する不信感や驚きによる感情的な反発を和らげることができます。
まとめ
もめない遺言を作成するためには、法的な有効性だけでなく、相続人それぞれの立場や感情にも配慮した設計が重要です。
そのためには、正確な表現・公平な配慮・感謝の気持ちを伝える工夫・遺留分への配慮・執行体制の整備など、総合的な視点が求められます。
相続人全員が安心して相続を迎えられるよう、心ある遺言書を作成することが大切です。