子どもがいない夫婦のケース | 相続対策としての遺言 | 遺言の手引き

子どもがいない夫婦のケース

子どもがいない夫婦の場合、相続人の構成が一般的な家庭と異なるため、遺言を残さないと想定外の相続トラブルにつながる可能性があります。
特に兄弟姉妹や甥・姪が相続人となるケースでは、配偶者と血族相続人との間でのトラブルが起こりやすく、遺言による対策が極めて重要です。

1. 法定相続分の仕組み(子どもがいない場合)

相続人は、以下の順序となります。

  1. 配偶者(常に相続人)
  2. 第1順位:子(いない)
  3. 第2順位:父母など直系尊属(存命であれば)
  4. 第3順位:兄弟姉妹(直系尊属もいない場合)

たとえば、配偶者と被相続人の兄弟姉妹が相続人となる場合、法定相続分は以下のとおりです。

相続人 法定相続分
配偶者 3/4
兄弟姉妹 1/4(人数で按分)

つまり、遺言がないと配偶者がすべての財産を相続できない可能性があります。

2. 兄弟姉妹との共有を避けるための遺言

兄弟姉妹との関係が希薄であったり、財産を配偶者にすべて遺したいと考える場合、必ず遺言書で明示しておくことが必要です。
遺言で「すべての財産を配偶者に相続させる」と明記すれば、兄弟姉妹には遺留分がないため、完全に排除することが可能です(民法1042条)。

逆に、遺言がない場合は、兄弟姉妹と配偶者との間で遺産分割協議が必要となり、関係性によっては合意が得られず、トラブルになることもあります

3. 夫婦それぞれの遺言が必要

たとえ夫が遺言で全財産を妻に相続させたとしても、次に妻が亡くなった際の相続は、妻の相続人(たとえば妻の兄弟姉妹)に移ることになります。
そのため、夫婦双方が遺言書を作成し、二次相続まで見据えた遺産の帰属先を指定しておくことが大切です。

例:

  • 夫:すべての財産を妻に相続させる
  • 妻:自分が相続した財産の一部を、夫側の親族に遺贈する

4. 不動産の共有を避ける

遺言がないと、不動産が配偶者と兄弟姉妹との共有状態になる可能性があります。
これは、売却・管理・名義変更が非常に困難になるリスクがあるため、遺言で配偶者に単独で相続させるように明記しておくのが望ましいです。

5. 配偶者が高齢の場合の生活保障

高齢の配偶者が一人残されたとき、生活資金や住居の安定が最優先です。
自宅や預貯金など、使いやすい資産を優先的に相続できるように遺言で指定し、かつ負担のない形で老後を支えられる内容にしておくことが望まれます。

まとめ

子どもがいない夫婦の相続では、兄弟姉妹が相続人になることで、思わぬ相続トラブルが起こりやすい状況です。
配偶者の生活の安定を守るためにも、遺言で相続先を明確に定めておくことが不可欠です。
また、夫婦それぞれが遺言を残すことで、二次相続も含めた安心な相続設計が実現できます。

【注意事項】
本記事は、法律に関する一般的な情報を提供するものであり、個別具体的な案件についての助言を行うものではありません。特定の事案や状況に応じた判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

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法令や規制は頻繁に変更される可能性がありますので、必要に応じて最新の情報をご確認いただくことをお勧めいたします。
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