遺言書の要式性とは
遺言は、法律で定められた方式(=要式性)に従って作成されなければ無効となります。この「要式性」とは、遺言という重要な法律行為に確実性と真実性を持たせ、後日のトラブルを防ぐために、あらかじめ民法で厳格に定められている形式的ルールのことを指します。
なぜ要式性が求められるのか
遺言は、遺言者が死亡した後に初めて効力を持つため、その内容を確認したり、本人の真意を確かめる手段が存在しません。したがって、遺言の真正性・明確性・安全性を確保するため、方式を守ることが絶対条件となっているのです。
各方式における要式性の具体例
自筆証書遺言
- 全文、日付、氏名をすべて自筆で記載すること(財産目録は例外あり)
- 署名と押印が必要(印鑑の種類は問われないが、実印が望ましい)
- 日付は「○年○月○日」と特定できる形式であること
公正証書遺言
- 遺言者が口述し、公証人が筆記すること
- 公証人が内容を読み聞かせ、遺言者と証人が内容を承認
- 遺言者・証人・公証人が署名・押印すること
秘密証書遺言
- 遺言書に署名・押印をし、封をした状態で公証人・証人に提出
- 公証人が遺言の存在を証明する証書を作成
- 封紙にも署名・押印が必要
形式不備があるとどうなる?
たとえ遺言の内容に合理性や真実性があったとしても、方式を守っていない場合には法律上「無効」とされてしまいます。実際に、日付が抜けていたり、パソコンで作成された自筆証書遺言が無効と判断された例もあります。
まとめ
遺言は、遺言者の意思を確実に実現するための大切な文書です。しかし、その効力は「方式に則っていること」が大前提です。どの方式を選ぶ場合でも、民法上の形式的要件を正確に理解し、それを守って作成することが何よりも重要です。不安がある場合は、専門家のチェックを受けることも検討しましょう。