遺言執行者の指定方法と選び方 | 遺言の内容と書き方 | 遺言の手引き

遺言執行者の指定方法と選び方

遺言執行者とは、遺言の内容を実現するために、遺産の名義変更や相続手続き、遺贈の実行などを行う法的な代理人です。
遺言書に明記しておくことで、相続手続きが円滑に進み、無用な争いや混乱を防ぐことができます。

1. 遺言執行者の役割とは

遺言執行者は、遺言の内容を具体的に実現するために、次のような職務を担います:

  • 遺言の内容の通知と説明
  • 不動産や預貯金の名義変更
  • 特定遺贈の実行
  • 相続人間の調整・書類手続き
  • 財産目録の作成・提出
  • 未成年者の認知、相続人の排除・廃除、一般財団法人の設立など特別な執行

法的には、遺言執行者に選ばれた者はその任務を受諾した時点で、相続人に代わって必要な処分ができる権限を持つとされています(民法1012条以下)。

2. 遺言書における指定方法

遺言書の中で、次のように記載します。

記載例:

 本遺言の執行者として、東京都○○区○○町○丁目○番○号
 行政書士 佐藤正樹(昭和45年1月1日生)を指定する。

実務上は、住所・氏名・生年月日を明記することが望ましいです。
また、複数名を共同で指定したり、予備的な執行者(予備指定)を置くことも可能です。

3. 遺言執行者を指定するメリット

  • 相続人全員の同意を得なくても遺言の内容を実行できる
  • 相続人間のトラブルや非協力を防ぎやすい
  • 専門家に依頼すれば、煩雑な手続きを一括代行してもらえる

4. 誰を選ぶべきか(選び方のポイント)

遺言執行者は、法律上、未成年者や破産者でなければ誰でもなれます(民法1009条)。
しかし、実務では以下のような基準で慎重に選ぶことが重要です。

おすすめの選任先:

  • 弁護士、司法書士、行政書士などの専門家(特に遺産が複雑な場合)
  • 信頼できる家族や知人(感情的に安定していて中立性がある人物)

避けた方がよい例:

  • 相続人間で利害が対立している者
  • 高齢や体調不安がある者
  • 相続手続きに無関心または知識がない者

5. 指定しなかった場合の対応

遺言書に遺言執行者の記載がない場合でも、相続人全員の同意があれば内容を実行できます。
ただし、認知や相続人排除、一般財団法人の設立のような特別な遺言は、必ず執行者が必要であり、その場合は家庭裁判所に選任申立てを行います。

まとめ

遺言執行者の指定は、遺言の実効性を高め、相続手続きを確実に進めるための重要なポイントです。
複雑な財産内容や相続人間の対立が想定される場合は、信頼できる第三者または専門家を指定することをおすすめします。
遺言書には明確に氏名・住所・生年月日を記載し、必要があれば予備の執行者も定めておきましょう。

【注意事項】
本記事は、法律に関する一般的な情報を提供するものであり、個別具体的な案件についての助言を行うものではありません。特定の事案や状況に応じた判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

また、正確性を期すよう努めておりますが、本記事の内容についての完全な正確性や最新性を保証するものではなく、本記事の利用により生じたいかなる損害についても当方は一切の責任を負いかねます。

法令や規制は頻繁に変更される可能性がありますので、必要に応じて最新の情報をご確認いただくことをお勧めいたします。
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