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家族間で起こりうる実例とアドバイス
相続の現場では、「まさかうちの家族に限って…」と思っていた人間関係が、財産を巡る局面で一変することがあります。
ここでは、実務でよく見られる家族間の相続トラブルの実例を挙げながら、それぞれに対する現実的な対処法と予防策を解説します。
実例1:通帳を管理していた長男に他の兄弟が不信感
被相続人の生前、長男が親の通帳を管理していたが、亡くなった後に預金残高が大きく減っていたため、他の兄弟が「勝手に使ったのではないか」と疑い、遺産分割協議が難航。
アドバイス:
- 早い段階で通帳の全期間の履歴を開示し、透明性を確保する
- 必要に応じて医療費・生活費など正当な使途を説明
- 不安が残る場合は、第三者(行政書士・弁護士)に財産目録の作成を依頼する
実例2:遠方に住んでいる兄弟が手続きに非協力的
兄弟姉妹の一人が地方や海外に居住しており、連絡が取りづらく書類のやり取りも遅延。遺産分割協議書に署名・押印がなかなか揃わず、金融機関の手続きや不動産の名義変更が進まない。
アドバイス:
- まずは電話やメールで協力のお願いを丁寧に伝える
- 郵送時には返信用封筒や記入見本を同封し、手間をかけさせない工夫を
- 調整が難しい場合は委任状の活用や司法書士等の代理対応も検討
実例3:同居していた相続人が財産を「自分のもの」と主張
長年親と同居していた長女が「家は自分が住んでいるからもらって当然」と主張し、他の相続人と対立。感情的な話し合いが続き、協議が進まない。
アドバイス:
- 不動産については現時点の評価額と使用状況を明示
- 公平性を保つため、不動産取得者が代償金を支払う方法などを提案
- 同居や介護が長期間続いていた場合は、寄与分の可能性も含めて再検討
実例4:遺言書の内容に一部の相続人が納得できない
遺言により一部の相続人にだけ不動産が相続され、他の兄弟には預金が分配されていたが、「不動産の方が価値が高い」として不満が噴出。
アドバイス:
- 遺言が公正証書か自筆か、法的に有効かを確認
- 不動産評価額や預金とのバランスを客観的に資料で提示
- 遺留分を侵害している場合は遺留分侵害額請求の可否も検討
実例5:被相続人の介護をした相続人が不満
「長年親の介護をしてきたのに、遺産が均等では納得できない」と主張する相続人と、「介護は家族として当然」と考える他の相続人が対立。
アドバイス:
- 介護の実態(年数・頻度・金銭的負担)を証明する資料の準備
- 寄与分の申立てを検討し、家庭裁判所で調停する方法も
- 今後の関係性も考慮し、柔軟な分割案の提示も選択肢
6. トラブルを防ぐためにできること
- 遺言書を作成しておく(特に分割の偏りがある場合)
- 家族信託や生前贈与を計画的に行う
- 財産目録を明確にして、情報の透明性を保つ
- 話し合いが難しい場合は第三者(行政書士等)を介入
相続は財産の問題であると同時に、家族の信頼関係が試される場面でもあります。
小さな誤解が大きな対立になる前に、冷静な対話と法的な備えが何よりの予防策となります。