配偶者が相続することのメリット・デメリット
相続において配偶者が財産を相続することは、ごく自然な選択に思えますが、その分配方法によっては将来の税負担や手続きに大きな影響を与えることがあります。
ここでは、配偶者が相続することのメリットとデメリットを整理し、一次相続時の判断が将来に与える影響について解説します。
1. 配偶者が相続することのメリット
① 配偶者控除により相続税が大幅に軽減される
配偶者は、相続財産のうち「1億6,000万円」または「法定相続分相当額」のいずれか多い額まで非課税とされるため、通常は相続税がかからないことが多いです。
② 生活基盤の維持・安定につながる
自宅や預貯金など、生活に必要な資産を配偶者が相続することで、高齢期の生活不安を軽減できます。
③ 小規模宅地等の特例が使いやすい
配偶者が自宅の土地を相続した場合は、要件を問わず自動的に小規模宅地等の特例(80%減額)を受けられるため、土地評価額が大幅に軽減されます。
④ 配偶者は遺留分侵害額請求のリスクが低い
遺留分侵害の対象となることはあるものの、子からの請求に発展するケースは少ないため、配分に柔軟性があります。
2. 配偶者が相続することのデメリット
① 二次相続で相続税が重くなる可能性
配偶者が財産を多く相続した場合、その財産はすべて次の相続(配偶者が亡くなったとき)で課税対象となります。
このときは配偶者控除が使えないため、相続税が高額になるリスクがあります。
② 認知症などにより財産管理が困難になることも
高齢の配偶者が財産を多く相続しても、後に認知症などで意思能力が低下した場合、その財産の処分・管理が難しくなるケースがあります。
その場合は成年後見制度の利用などが必要になり、家族が柔軟に対応できなくなることもあります。
③ 子との共有状態が発生しやすい
たとえば不動産を「配偶者と子で2分の1ずつ共有」した場合、売却や処分時に子の同意が必要になり、実務的に不都合が生じることもあります。
④ 将来の相続人間の争いの火種になることも
一次相続で配偶者に財産を集中させた結果、二次相続の際に相続人(兄弟姉妹)間で不公平感が生まれることがあります。
3. 一次・二次を見据えたバランスのある設計が重要
一次相続においては、目先の税負担を抑えることだけでなく、将来の二次相続も見越した財産分けが大切です。
たとえば次のような対応が有効です。
- 配偶者の取得財産を基礎控除(例:3,600万円)内に収めるように設計する
- 生前贈与や家族信託などを活用し、柔軟な財産承継体制を構築
- 遺言書を作成して、二次相続時の分配方針も明確にしておく
4. まとめ
配偶者が相続することには大きな節税効果と生活上の安心感がありますが、将来の税負担や実務面の負担が増す可能性もあります。
そのため、一次相続の段階で二次相続までを見越したトータル設計が不可欠です。
相続財産の種類や金額、家族構成に応じて、行政書士や税理士など専門家のサポートを得ながら、後悔のない財産分けを検討しましょう。