遺産分割協議後に遺言書が出てきた場合の対応 | 遺言書があった場合の対応 | 相続の手引き

遺産分割協議後に遺言書が出てきた場合の対応

相続において、遺言書の有無は財産の分け方を大きく左右する重要な要素です。
原則として、遺言書の内容が法定相続分や遺産分割協議より優先されるため、遺言書の存在を確認せずに協議を進めてしまうと、後から大きなトラブルに発展する恐れがあります。
ここでは、遺言書の事前確認の重要性と、遺産分割協議後に遺言書が発見された場合の対応について解説します。

1. 遺言書は遺産分割協議より優先される

遺言書が有効であれば、相続財産の分配は遺言の内容に従うのが原則です。
そのため、相続人全員が合意して遺産分割協議を行ったとしても、遺言書が存在していれば協議の効力が否定される可能性があります。

【例】

協議では「不動産を長男、預金を次男と三男で分ける」と決めていたが、その後「不動産を三男に相続させる」という公正証書遺言が見つかった場合、原則として遺言に従った分割が優先されます。

2. 協議前に遺言書の有無を確認する重要性

遺産分割協議を開始する前に、以下の方法で遺言書の存在を確認することが非常に重要です。

① 公正証書遺言の検索(日本公証人連合会)

  • 全国の公正証書遺言は「遺言検索システム」で検索が可能(無料)
  • 公証役場で所定の手続きをすれば、被相続人が作成したかどうかを確認できます

② 自筆証書遺言の保管確認(法務局遺言書保管所)

  • 2020年7月から始まった自筆証書遺言書保管制度を利用した遺言書は、法務局で検索可能
  • 被相続人の生年月日・氏名などをもとに保管の有無を確認できます
  • 通知制度を利用することで、死亡届によって自動的に遺言書の存在を通知させるように指定することができます。

③ 自宅・貸金庫・かかりつけの士業などへの確認

  • 封筒に「遺言書在中」などと書かれた書類が保管されているケースもある
  • 行政書士や税理士などに預けられている場合もあるため、問い合わせが有効

3. 遺産分割協議後に遺言書が出てきた場合の対応

協議後に遺言書が見つかった場合、状況に応じて以下のような対応が考えられます。

① 遺言が有効であれば、協議は基本的に無効

遺言書の内容と協議内容が一致していない場合、遺言が法的に有効であれば協議の効力は原則否定される可能性があります。
相続登記などを済ませていても、やり直しになるケースがある(更生登記)ため注意が必要です。

② 全員が遺言と異なる分割に同意すれば協議は有効

遺言と異なる分割を行うことも可能ですが、この場合は相続人全員の再同意が必要です。
新たに遺産分割協議書を作成して、協議の意思を明確にしましょう。

③ 自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要

発見された遺言書が自筆証書遺言である場合は、家庭裁判所での「検認」手続きが必要です。
検認を経て、正式に有効な遺言書として取り扱われます。

4. 実務上の注意点

  • 協議前に必ず遺言書の有無を確認すること
  • 発見された遺言が偽造・変造の可能性がある場合は検認・筆跡鑑定の検討
  • すでに登記・払戻し手続きが完了していた場合でも、訴訟や登記の更正が必要になる可能性あり

5. まとめ

相続手続きをスムーズかつ正確に進めるためには、遺産分割協議の前に遺言書の有無を必ず確認することが欠かせません。
遺言書の存在を見落とすと、協議が無効となったり、手続きのやり直しが必要になったりと、時間的・費用的な負担が大きくなります
万一、協議後に遺言書が出てきた場合は、速やかに専門家に相談し、適切な対応をとることが大切です。

【注意事項】
本記事は、法律に関する一般的な情報を提供するものであり、個別具体的な案件についての助言を行うものではありません。特定の事案や状況に応じた判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

また、正確性を期すよう努めておりますが、本記事の内容についての完全な正確性や最新性を保証するものではなく、本記事の利用により生じたいかなる損害についても当方は一切の責任を負いかねます。

法令や規制は頻繁に変更される可能性がありますので、必要に応じて最新の情報をご確認いただくことをお勧めいたします。
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