Q. 遺言書が複数ある場合は?
A. 通常は、もっとも新しい日付の遺言書が優先されます。
ただし、内容や形式によっては、すべてが有効となることもあれば、一部だけが効力を持つ場合もあるため、慎重な判断が必要です。
遺書が複数ある場合の解説
相続手続きの場面で、複数の遺言書が発見されることは珍しくありません。
たとえば、生前に自筆証書遺言を何度か書き直していたり、公正証書遺言を作成した後もメモのような形で自筆の遺言を残していた場合などが典型です。
■ 原則:「後の遺言が前の遺言に優先」
民法では、新しい日付の遺言が、それ以前の遺言と内容が矛盾する部分については撤回されたものとみなされるとされています(民法第1023条)。
したがって、一番新しい遺言書が、基本的に効力を持つと考えて差し支えありません。
ただし、後の遺言が前の遺言を完全に否定していない場合は、両者が併存することもあります。
たとえば、1通目の遺言で「不動産は長男に相続させる」、2通目の遺言で「預金は長女に相続させる」と書かれていたような場合、どちらも矛盾しなければ有効です。
■ 注意点:日付が不明確な場合や形式不備のある遺言
自筆証書遺言でありがちなのが、日付があいまいであったり、署名や押印が欠けているなどの形式的な不備です。
その場合は、遺言書としての効力自体が否定されます。
したがって、複数の遺言書が見つかったときには、まずそれぞれの形式的有効性を確認する必要があります。
■ 実務対応:どれを使うか、どう選ぶか
- 明らかに最新かつ有効な遺言がある → それを根拠に相続手続を行う
- 内容に矛盾がある → 前の遺言は、その矛盾部分だけ撤回されたとみなす
- どれが有効か判断できない → 専門家に相談の上、家庭裁判所の判断を仰ぐ
| 1通目(2023年4月20日) | 2通目(2025年4月1日) | 有効性 |
|---|---|---|
| 不動産は長男に相続させる | 有効 | |
| 預金は次男に相続させる | 預金は長女に相続させる | 有効 |
2通目によって1通目の「預金は次男に相続させる」という部分は撤回され、「預金は長女に相続させる」となります。「不動産は長男に相続させる」の部分は有効のままです。
■ トラブルを避けるには
遺言書が複数あることで、相続人同士の解釈の違いから紛争に発展するリスクもあります。
そのため、次のような点に留意することが重要です。
- 新しい遺言を作成する際には「これまでの遺言を撤回する」旨を明記する
- 遺言の本数をむやみに増やさない(修正ではなく、書き直す)
- 公正証書遺言を活用して最新の遺言を明確にしておく
- 古い遺言は処分しておく(ただし慎重に)
【まとめ】
遺言書が複数ある場合は、原則として最新の日付のものが優先されるとされていますが、内容や形式の確認が不可欠です。
遺言を作成する際は、後々の混乱を防ぐために、古い遺言の撤回や整理、公正証書遺言の活用を検討すると良いでしょう。