特別受益・寄与分との関係
遺言や相続においては、相続人が生前に受けた贈与や、被相続人の財産形成・維持に貢献した事実がある場合、「特別受益」や「寄与分」として考慮されます。
これらは相続分の算定に影響するだけでなく、遺留分の計算にも大きく関係します。ここでは、両者の制度趣旨と遺留分との関連性を解説します。
1. 特別受益とは
特別受益とは、法定相続人が被相続人から生前に特別な利益(贈与や援助)を受けたことをいいます(民法903条)。
典型例としては以下のようなものがあります。
- 住宅購入資金の援助
- 結婚費用や学費の負担
- 多額の生前贈与
このような特別受益は「みなし相続財産」として遺産に加算され、相続分を計算する際に差し引かれることになります。
遺留分の計算においても、特別受益は「既に取得した財産」として考慮されるため、請求額から控除されるのが原則です。
例:
- 子Aが1,000万円の生前贈与を受けていた
- 遺留分は1,200万円 → 請求できるのは差額の200万円のみ
2. 寄与分とは
寄与分とは、相続人のうち特定の者が、被相続人の財産の維持や増加に特別の貢献をした場合に、その分を他の相続人より多く相続できる制度です(民法904条の2)。
代表的なケースには以下のようなものがあります。
- 被相続人の介護を長年にわたって行っていた
- 事業を共に経営し、財産を大きく増加させた
- 生活費を支え、財産の減少を防いだ
寄与分が認められると、相続財産から寄与分を控除したうえで、残りを他の相続人で按分することになります。
遺留分の計算においては、寄与分は考慮されず、あくまで相続分に関する制度とされていますが、実務では遺留分請求を抑制する交渉材料になることがあります。
3. 特別受益と寄与分の調整と遺留分
ある相続人が特別受益を受けており、かつ寄与分もあるという複雑なケースも存在します。
この場合、実務では以下のような流れで整理されることが一般的です。
- まず特別受益として生前贈与等を相続分から控除
- 次に寄与分を考慮して、最終的な分配割合を調整
- 遺留分を請求された場合は、特別受益をすでに受け取っている分として控除
ただし、寄与分については遺留分の侵害を正当化する根拠にはならないため、実務では調停や訴訟で調整が図られることになります。
4. 実務上の対応と注意点
- 遺言書に特別受益として扱う旨を明記しておくことで争いを予防できる
- 寄与分を主張する場合は、具体的な証拠(介護記録・送金履歴など)が必要
- 遺留分請求が見込まれる場合は、事前に配分を調整するか、金銭で支払える体制を整えておく
まとめ
特別受益と寄与分は、法定相続分を修正する制度ですが、遺留分の請求にも大きく関係してきます。
特に生前贈与や介護の事実がある場合、その取り扱いが相続全体の分配に直結するため、遺言書での明確な記載や証拠の保管が重要です。
事前の準備と慎重な設計が、将来の相続トラブルを回避する鍵となります。