本人の意思と人権の観点から
身元保証が求められる場面では、「本人の意思がどのように尊重されているのか」「保証人がいないことで不当に不利益を被っていないか」という点が、しばしば問題となります。特に、医療や介護といった場面では、本人の生活や命に関わる判断が行われるため、本人の意思と人権をどう守るかという視点は欠かせません。
保証人の有無で差別される現実
法律上、保証人がいないことを理由に入院や施設入所を拒むことは許されませんが、現場では実質的に「保証人がいなければ受け入れられない」という対応がされることがあります。これは、保証人がいないという理由だけで、本人が必要な医療や介護サービスを受けられないという、不利益な取扱いにつながっています。
高齢者や障害者、ひとり暮らしの方にとって、これは実質的な差別であり、生活の自由や健康権の侵害とも捉えられかねない深刻な問題です。
本人の意思決定の尊重
近年では、「本人の意思を最大限に尊重する」という考え方が、医療・介護の現場でも重視されるようになっています。成年後見制度や任意後見、事前指示書(リビング・ウィル)などを活用し、本人が元気なうちに自らの希望を明確にし、それを支援者が尊重するという仕組みづくりが進められています。
それにもかかわらず、保証人がいないことによって「意思決定が不十分な人」とみなされたり、支援体制が整っていないという理由で入所が先送りされるような事態は、本人の尊厳を損なうことにつながりかねません。
支援と尊重のバランス
身元保証が「本人の支援」を目的とするものであるならば、その制度が本人の自立や自由を制限するものになっては本末転倒です。支援体制を整えることと、本人の意思を尊重することの両立が、今後の制度運用において重要な課題となります。
身元保証制度を利用する際には、「誰が」「何を」「どのように支援するのか」を明確にし、本人の意向を起点とした契約や関係性を築くことが望まれます。また、社会全体としても、「保証人がいない人でも、安心して暮らせる仕組み」を構築していくことが求められています。