原則不要の制度と現場の実情
高齢者が介護施設に入所する際、制度上は「保証人がいなくても入所できる」ことが原則とされています。特に、特別養護老人ホーム(特養)や一部の公的施設では、保証人を立てる義務は法令上設けられていません。
しかし、現場の実情としては、ほとんどの施設で何らかの形で「身元保証人」「身元引受人」の記載を求められているのが実態です。この制度と現実の間には、大きなギャップが存在します。
制度上の建前:保証人は「不要」
特養などの公的施設では、介護保険制度に基づき、入所の可否は本人の要介護度や緊急性で判断されるべきとされています。そのため、家族がいないことや保証人がいないことを理由に入所を拒否することは、本来認められていません。
厚生労働省も、「保証人がいないことをもって、入所を拒否することがあってはならない」という見解を示しています。
現場での運用:保証人が求められる理由
一方、施設の現場では「入所後のトラブルに備えたい」「緊急連絡先が必要」「死亡時の対応をしてくれる人が必要」といった理由から、実質的には保証人がいないと入所が難しいケースが多く見られます。
また、家族がいない入所希望者に対して、後見人制度や身元保証サービスの利用を事実上の条件として提示されることもあり、形式的には「不要」であっても、何らかの形で代替的な支援体制を求められているのが現実です。
求められるのは「支援体制の明確化」
施設側としては、金銭的な保証以上に「この人に何かあったとき、誰が対応してくれるのか」を知っておきたいというニーズがあります。つまり、保証人という呼び方にこだわらずとも、支援者や緊急連絡先が明確であることが重要なのです。
こうした背景から、制度上は不要でも、実務的には「何らかの保証的立場の人」が求められているのが現場の実情です。これに対応するため、家族に代わって専門職や保証会社を活用するケースが増えています。
入所を検討する際は、「保証人は必要かどうか」ではなく、「支援体制として何が求められるのか」という視点で施設側とよく相談し、自分に合った準備を進めることが大切です。