家族で話し合っておきたいこと
万が一のときに備えて、家族の間で事前に話し合いをしておくことは、遺された側の負担を大きく減らすだけでなく、誤解やトラブルを防ぐためにも非常に有効です。話しづらい内容もありますが、「何も伝えないまま」は、かえって大きな混乱を招きかねません。
医療・介護に関する希望
病気や介護が必要になったとき、どのような治療や生活を望むのかについて、あらかじめ家族と話し合っておくと安心です。
- 延命治療を望むかどうか(公正証書による尊厳死宣言なども)
- 在宅介護と施設介護の希望
- 信頼している医師や医療機関の情報
本人の意思が分からないまま家族が判断を迫られることは、非常に負担が大きく、後悔につながるケースもあります。リビング・ウィル(事前医療指示書)などの活用も検討されるとよいでしょう。
葬儀やお墓についての希望
葬儀の形式やお墓のことなども、家族と話し合っておくと、「本人の希望を尊重した形」で進めることができます。また、費用負担や場所の希望なども含めて話しておくと、家族の迷いが少なくなります。
主な検討項目:
- 葬儀の有無・形式(家族葬、一般葬、直葬など)
- 宗教・宗派、菩提寺の有無
- 埋葬場所・納骨先(既存の墓地、樹木葬、散骨など)
- 喪主を誰にするか
可能であれば、生前に見積りや資料を集めておくのもよい準備になります。
財産・相続に関する考え
遺言書がある場合もない場合も、どのような財産があり、誰にどう引き継いでほしいかという考えを、事前に家族に伝えておくことが重要です。
特に以下のような事情がある場合は、話し合っておかないと相続争いにつながる可能性があります。
- 不動産など分けにくい財産がある
- 内縁関係や前婚の子どもがいる
- 事業を継ぐ予定の相続人がいる
- 特定の子に多く渡したい意思がある
「何も言われていなかった」ことが争いの原因になることが多いため、遺言書や財産目録とともに、日頃の会話の中でも少しずつ思いを伝えていくことが大切です。
必ず守らなければならないというわけではなく、遺言書と矛盾する内容があれば遺言書の内容が優先されます。混乱を招く原因にもなりますので遺言書と異なる内容を伝えることは避けるべきです。
デジタル資産・日常の契約など
日常的に使っているスマートフォン、パソコン、ネットバンキング、SNSアカウントなどについても、どのように扱ってほしいかを家族と共有しておくことが望まれます。
- ネット銀行・証券の口座の有無
- サブスクリプション(定期課金)の一覧
- SNSやメールアカウントの取り扱い(削除、保管など)
- スマホやPCのパスコード
これらの情報は死後すぐに必要となるケースもあるため、エンディングノートや財産目録とあわせて、話し合いの中で共有しておくことが大切です。
まとめ
家族で話し合うことは勇気がいるかもしれませんが、元気なうちに伝えられることは、かけがえのない「思いやり」です。少しずつでも構いませんので、ご自身の考えや希望を言葉にしていくことが、家族の安心と信頼につながります。