預貯金口座の凍結と相続手続きの開始
口座は死亡と同時に凍結される
被相続人(故人)が亡くなったことが銀行に伝わると、その人名義の預貯金口座は凍結され、出金・引き落としなどができなくなります。
これは相続トラブルを防ぐための措置であり、家族であっても自由に預金を引き出すことはできません。
また、銀行が死亡を把握していない場合でも、死亡届の提出や死亡広告の掲載などで銀行が認知した時点で凍結されます。
公共料金やクレジットカードなどの自動引き落としも停止されるため、必要に応じて別の口座から支払いを継続できるよう準備しておくことが重要です。
相続手続きの開始
口座の解約・名義変更・払戻しなどを行うには、相続人全員の同意に基づいた正式な相続手続きが必要です。
銀行によって手続き書類や流れに多少の違いはありますが、一般的には次のような書類を求められます。
主な必要書類
- 金融機関所定の相続手続き依頼書
- 故人の戸除籍謄本(出生から死亡までの一連のもの)
- 相続人全員の戸籍謄本(遺産分割協議の場合)
- 相続人の印鑑登録証明書
- 遺言書(ある場合)または遺産分割協議書
遺言書があり、具体的に相続人が指定されている場合は、遺言書、個人の戸籍謄本、相続人の印鑑証明書で構いません。
ゆうちょ銀行の場合は、上記に加えて、相続確認表の提出が必要になります。
預貯金の仮払い制度(払戻し制度)
相続手続きが完了していなくても、法定相続人は一定の条件のもとで、被相続人の預貯金を一部引き出すことができます。
これは、葬儀費用や当面の生活費などを早期に確保するために設けられた「仮払い制度」によるものです。
引き出し可能な金額
以下のいずれか低い金額が限度です。
- 被相続人の口座残高 × 法定相続分 × 1/3
- 1金融機関あたり150万円まで
利用にあたってのポイント
- 相続人のうち1人が単独で請求できます
- 遺産分割前でも利用可能です
- 相続関係を証明する戸籍などの書類が必要です
金融機関によって書類の様式や必要書類が異なるため、事前に窓口で確認することをおすすめします。
また、この制度を利用すると、相続放棄ができなくなる可能性がありますので、慎重に判断する必要があります。
法定相続情報一覧図の活用
複数の銀行や保険会社などで相続手続きを行う場合、毎回戸籍一式を提出するのは非常に手間がかかります。
そこで役立つのが、法務局で発行される「法定相続情報一覧図の写し」です。
法定相続情報一覧図とは、被相続人と相続人の関係を一覧形式でまとめたもので、法務局に戸籍一式を提出し認証を受けることで発行されます。
一度取得すれば、複数の金融機関や不動産登記、保険などで共通して利用できるため、書類の簡素化に非常に有効です。
法定相続情報一覧図を取得するための主な書類
- 被相続人の出生から死亡までの戸除籍謄本
- 相続人の戸籍謄本
- 相続人の住民票
- 申出書(法務局書式)
- 一覧図(指定様式)
法定相続情報一覧図は、相続人自身が作成する書類で、戸籍謄本等に基づいて「誰が相続人であるか」を一覧にしたものです。
その内容が正しいかどうかを、法務局が戸籍をもとに確認し、認証を行うことで、正式な証明書類として利用できるようになります。
作成された一覧図には、登記官の職印とともに「法定相続情報一覧図の写し」として交付され、複数の金融機関や行政手続きで共通して使用できます。
なお、一覧図自体は申出人がパソコンや手書きで作成可能で、法務局で書式見本も配布されています。
一覧図の写しは無料で複数枚発行可能です。相続手続きを複数の機関で行う予定がある場合は、早めに取得しておくことをおすすめします。
専門家への相談も検討を
相続人が多い場合や、預貯金以外にも不動産・有価証券などがある場合は、遺産分割協議の内容を慎重に検討する必要があります。
行政書士・司法書士・弁護士などの専門家に相談することで、スムーズかつ適正な手続きが可能になります。