死因贈与と遺贈 | 相続の基本知識 | 相続の手引き

死因贈与と遺贈 ― 似て非なる2つの財産承継方法

人が亡くなったときに、財産を他人に承継させる方法として「遺贈」や「死因贈与」という手段があります。
いずれも「死亡を原因として財産を譲る」点では共通していますが、法律上の性質や手続の方法、登記や税金の扱いに違いがあります。
本記事では、遺贈と死因贈与の違いと、それぞれの特徴について詳しく解説します。

1. 遺贈とは

遺贈とは、遺言によって遺産の一部または全部を特定の人に無償で譲る行為です(民法964条以下)。
遺贈を受ける人は「受遺者」と呼ばれ、相続人である場合も、ない場合も指定が可能です。

【遺贈の種類】

  • 包括遺贈:遺産の全体または割合(例:「全財産の3分の1」)を贈る
  • 特定遺贈:特定の財産(例:「○○の土地を贈る」)を贈る

特定遺贈では、遺言に記載された財産だけが対象です。受遺者は遺言者の死亡により自動的に権利を取得します。

2. 死因贈与とは

死因贈与とは、「贈与者の死亡を条件に、贈与する」という契約です(民法554条)。
つまり、遺言ではなく契約によって効力が発生する点が遺贈と大きく異なります。

死因贈与契約は、贈与者と受贈者の双方の合意が必要で、通常は書面(公正証書)で締結するのが安全です。
贈与者の死亡によって効力が発生しますが、契約なので贈与者の生前に意思確認が済んでいるという意味で、遺言よりも確実性が高いとされることもあります。

不動産の場合、仮登記をすることができます。死亡後の本登記は相続人全員の共同申請となりますが、公正証書で契約書を作成することで受贈者及び執行者の共同申請によることができます。

3.死因贈与が有効なケース

死因贈与は、贈与者と受贈者の間であらかじめ合意を交わし、贈与者の死後に確実に財産を承継させたいときに適しています。
たとえば、遺言ではなく契約によって受贈者に強い法的権利を与えたい場合や、相続人でない人に財産を確実に渡したい場合などに選ばれることがあります。

4. 両者の違い(比較表)

項目 遺贈 死因贈与
成立方法 遺言書による一方的意思表示 生前の契約(合意)によって成立
受取人の同意 不要 必要(原則書面)
登記のための添付書類 遺言書(検認済)または公正証書遺言 死因贈与契約書(公正証書が望ましい)
税金の扱い 相続税 相続税
放棄の可否 可(民法986条) 契約により放棄できない場合あり

5. 税務上の取扱い

遺贈も死因贈与も「被相続人からの無償取得」であるため、相続税の課税対象となります(相続税法3条1項1号)。
つまり、贈与税ではなく相続税が課税されるという点で共通しています。
ただし、受遺者や受贈者が相続人でない場合、相続税の基礎控除・税率が不利になることがあります。

6. まとめ

遺贈は遺言による一方的な意思表示、死因贈与は契約に基づく合意という点で法的性質が異なります。
しかし、いずれも「死亡を原因として財産を取得する」ため、相続税の課税対象となります。
不動産の場合の登記には、いずれも相応の書類と手続きが求められます。
相続対策としてこれらを利用する際には、契約・遺言・登記・税務の観点から慎重な設計が必要です。

【注意事項】
本記事は、法律に関する一般的な情報を提供するものであり、個別具体的な案件についての助言を行うものではありません。特定の事案や状況に応じた判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

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法令や規制は頻繁に変更される可能性がありますので、必要に応じて最新の情報をご確認いただくことをお勧めいたします。
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