相続人との関係とトラブル対策 | 遺言執行者の役割と実務 | 相続の手引き

相続人との関係とトラブル対策

遺言執行者は、相続人と密接に関わりながら遺言の内容を実現していく役割を担います。相続人の代理人ではない独立した立場である一方、相続人の理解と協力がなければ手続きが進まない場面も多いため、適切な関係構築とトラブル防止策が非常に重要です。

1. 相続人との関係で生じやすいトラブル

  • 遺言内容への不満:「自分がもらえると思っていた財産が他の人に遺贈されていた」などの心理的反発
  • 遺言の有効性をめぐる争い:自筆証書遺言の真正性、認知や遺贈の意思表示に対する異議
  • 手続きの不透明さに対する疑念:遺言執行者の動きが見えないことで不信感を持たれる
  • 遺留分侵害による請求:法定相続人からの遺留分侵害額請求との関係

2. トラブルを防ぐための基本姿勢

  • 中立・誠実な姿勢:特定の相続人の肩を持たず、あくまで「遺言の内容」を忠実に執行する
  • 丁寧な説明と定期的な報告:進捗状況や手続き内容を文書で共有することで、誤解や疑念を防ぐ
  • 記録の保存:通帳コピー、書類提出控え、登記完了証などの証拠を保管し、求めに応じて提示できるようにする
  • 連絡手段の工夫:電話ではなく、メールや書面でやり取りを残すことで後々の証明が可能に

3. 実務上のトラブル防止策

(1)財産目録を速やかに交付

就任後、遺言執行者は財産目録を作成し、相続人に交付する義務があります。初期段階で全体像を示すことで、相続人間の不信感を軽減できます。

(2)遺言の内容と執行方針の説明

必要に応じて、相続人に対し「このような内容の遺言に基づき、手続きを進めます」と説明文書を送付すると、事前のトラブル回避につながります。

(3)財産の換金や名義変更時には報告

例えば、不動産の売却や預金の解約後には、どの財産がどのように処理されたかを報告書形式で説明することで、透明性を確保できます。

(4)遺留分の主張があった場合の対応

相続人から遺留分侵害額請求があった場合には、遺言の執行を一部留保したうえで、弁護士等と連携して対応することが適切です。遺言執行者自身が紛争の当事者になることは避けるべきです。

4. トラブルが拡大しそうなときの対応

相続人間の対立が激しく、遺言執行者としての中立性を維持できない状況になった場合には、家庭裁判所へ辞任の申し出や、専門職への引き継ぎを検討することも重要です。

5. 実務アドバイス

遺言執行者は、遺言の実現という重要な法的任務を担いながら、同時に相続人との信頼関係構築にも気を配る必要があります。
そのためには、一貫した説明責任・透明性・記録の整備が最も有効なトラブル防止策となります。行政書士などの専門家が執行者を務めることで、感情的対立を抑えつつ、公正な執行が期待される場面も多くあります。

【注意事項】
本記事は、法律に関する一般的な情報を提供するものであり、個別具体的な案件についての助言を行うものではありません。特定の事案や状況に応じた判断が必要な場合は、弁護士などの専門家にご相談ください。

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法令や規制は頻繁に変更される可能性がありますので、必要に応じて最新の情報をご確認いただくことをお勧めいたします。
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