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遺言書がある場合の相続手続きの進め方
被相続人が遺言書を残していた場合、相続手続きの進め方は「遺言書の種類」によって異なります。遺言書が法的に有効であれば、基本的にはその内容に従って相続を行うことになりますが、手続きの中には検認や遺言執行など特有のステップが必要となるため、注意が必要です。
遺言については以下を参考にしてください。

遺言
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1. 遺言書の有無と種類を確認
まず、遺言書の有無を確認し、その種類(自筆証書・公正証書・秘密証書など)を確認します。
公正証書遺言であれば検認は不要ですが、自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所での検認手続きが必要になります。
2. 自筆証書遺言が見つかった場合の手続き
- 勝手に開封せず、封がある場合はそのまま保管
- 被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に検認の申立て
- 申立後、家庭裁判所で検認期日が指定され、相続人に通知
- 検認が終わった後、遺言書が正式に使用可能となる
なお、法務局に保管された自筆証書遺言(自筆証書遺言保管制度を利用したもの)は、検認不要です。
3. 公正証書遺言がある場合の進め方
公正証書遺言はすでに法的に有効であり、検認も不要です。そのため、遺言の内容に従ってすぐに相続手続きに着手できます。
以下のようなステップで手続きを進めていきます。
- 遺言書の写し(正本・謄本)を確認
- 記載された取得者ごとに、不動産・預貯金・株式等の手続き開始
- 遺言執行者が指定されている場合は、執行者が各手続きを主導
4. 相続人による遺産分割協議は不要
有効な遺言書が存在する場合、その内容に従って遺産を分けるため、通常は遺産分割協議は不要です。ただし、遺言書に記載のない財産があった場合や、相続人全員が同意して内容を変更したい場合には、協議による対応も可能です。
5. 各手続きに必要な書類(例)
| 手続き内容 | 主な必要書類 |
|---|---|
| 預貯金の解約・名義変更 | 遺言書(原本・コピー)、金融機関所定の書類、戸籍関係書類 |
| 不動産の相続登記 | 遺言書(検認済証明書含む)、登記申請書、戸籍一式、固定資産評価証明書 |
| 株式・投資信託の名義変更 | 遺言書、証券会社の手続書類、印鑑証明書など |
6. 実務アドバイス
遺言書があるからといって、すべての相続手続きが簡単になるわけではありません。
遺言の記載が不完全であったり、遺言書に矛盾がある場合などは、かえってトラブルのもとになることもあります。
また、遺留分の侵害がある場合は、他の相続人から遺留分侵害額請求を受けることもあるため、慎重な確認が必要です。
手続きに不安がある場合は、行政書士・司法書士・税理士など専門家のサポートを活用し、遺言の内容と相続人の状況に合わせて、スムーズに対応を進めることをおすすめします。