民法第775条は、嫡出否認の訴えに関する具体的な手続きと、その否認権を行使する対象について定めています。この条文は、嫡出否認の法的な構造を明確にし、適正な親子関係を確立するための手続きを規定したものです。以下に詳しく解説します。
民法775条 嫡出否認の訴え
第775条
第1項 次の各号に掲げる否認権は、それぞれ当該各号に定める者に対する嫡出否認の訴えによって行う。
一 父の否認権 子又は親権を行う母
二 子の否認権 父
三 母の否認権 父
四 前夫の否認権 父及び子又は親権を行う母
第2項 前項第1号又は第4号に掲げる否認権を親権を行う母に対し行使しようとする場合において、親権を行う母がないときは、家庭裁判所は、特別代理人を選任しなければならない。
嫡出否認の訴えとは
嫡出否認の訴えとは、親子関係が法律上の推定に基づいて成立している場合に、その推定を覆すための法的手続きです。この訴えにより、実際の親子関係が明確化されます。民法上、婚姻中の子は父(夫)の子になりますが、父(夫)が認めない場合などが対象となります。
否認権と対象
第1項では、否認権を持つ者とその行使対象が明記されています。
- 父の否認権:否認の相手は「子」または「親権を行う母」です。
- 子の否認権:否認の相手は「父」です。
- 母の否認権:否認の相手は「父」です。
- 前夫の否認権:否認の相手は「父」および「子」または「親権を行う母」です。
特別代理人の選任
第2項では、否認権を親権を行う母に対して行使する場合で、親権を行う母がいない場合の規定が示されています。この場合、家庭裁判所が特別代理人を選任する必要があります。これにより、当事者の利益が適切に保護されます。
嫡出否認の意義
嫡出否認の訴えは、親子関係の法的安定と、実際の家族関係の真実性を調和させるために重要です。法が定めた明確な手続きを通じて、不適切な親子関係の成立を回避できます。
民法775条についての質問
- Q: 嫡出否認の訴えはどのように行いますか?
- A: 否認権を持つ者が、規定された相手に対して裁判所で訴えを提起する必要があります。
- Q: 特別代理人とは何ですか?
- A: 親権を行う母がいない場合など、家庭裁判所が当事者の利益を保護するために選任する代理人です。
- Q: 前夫が否認権を行使する場合、対象は誰ですか?
- A: 前夫の否認権の対象は、「父」および「子」または「親権を行う母」です。
- Q: 否認権を行使した場合、その決定は覆されますか?
- A: 訴訟による最終決定が出た場合、原則として覆されません。ただし、訴訟中に新たな証拠が出た場合は再検討される可能性があります。